以前居を構えていた洞窟から程近い丘の上に建てられた新たな住まい。
ほぼポップの希望によって建てられたその新居は。
洞窟の比べれば日当りも当然良く、
時折海沿い特有の突風が潮風を運んでくれる。

生活と言う面に関しては殆ど拘りも頓着もない自分にとっては、
住まいが変わった所でさして生活に変化がないのだけれど。
掃除から始まり、お茶の準備まで、
何だかんだとパタパタ忙しなく、
けれど機嫌よく動き回るポップの足音を聞けば、まぁそれも悪くないかと思えてしまう。
そんな自分に甘くなったんもんだと自嘲気味に呟いて。
マトリフはポップの方へと視線を向けた。






「あのさぁ、少しは手伝おうとか思わねぇの?」


ふとその視線に気付いたのかポップは動きを止め、
呆れ混じりにそう問い掛ける。
とは言っても、彼が手伝う事など滅多な事がない限り有り得ないから、
答えはわかりきっているのだけれど。
案の定、面倒臭いと呟かれた拒否の返事に、ポップはやれやれと肩を竦め。
それからマトリフの座るソファーへと近付く。


「ま、もう殆ど終わってるから良いけど。
つーかなんだよ?さっきからジロジロ見て。」


何か汚れでも付いてるのかと首を傾げても、
曖昧に苦笑されれば益々わからないとポップは小さく唸る。
汚れでも付いているのでなければ、
今更自分を見る理由がわからないと言わんばかりのその様子に、
マトリフは笑みを悪戯なものに変えれば、
背凭れから身体を離しついとポップを指差す。


「・・・・いや、育ったなぁと思ってただけだ。」

「・・・・・・・・・何処見て言いやがる、このエロ師匠。」


指差された先が自分の胸だと気付けばポップは何度目かの呆れ顔を披露する。
大戦から4年。
自分も来年には20歳になる。
かつての未来には遠く及ばない歳だとしてしても、もう子供と呼べる歳でもない。
それは勿論、体型にも言える事。
あの頃に比べ多少でも女らしくなってなければ、逆に可笑しいと言うものだ。

だろう?と苦笑交じりに問いかけ、
ポップがマトリフの膝に乗り上げ顔を近づければ。
そのポップを支える様に腰に触れながらマトリフも苦笑する。


「ま、確かにその通りってもんだ。
特に胸なんざ、あのままだったら謙虚にも程があるしな。」

「師匠もしかして喧嘩売ってる?」

「事実を述べただけだが?」


一瞬ヒクリと米神に青筋を立てるも、
確かにあの当時自分の胸は謙虚だったと思い返せば返せる言葉もなく。
仕方なしに反論を諦めたポップは小さく溜息を零す。
そんな怒るに怒れないポップの様子にマトリフはクツクツと笑いを噛み殺せば、
目前にある以前よりも少し長くなった髪に指を絡めた。


「まぁ、そう不貞腐れるな。
事実は事実だが、コレでも褒めてるんだぜ?」


そう呟けば、何処が?と恨めしそうに睨むポップの髪を掴んだ手を引き寄せ、
その髪に口付ける。
あの頃は確かに、全体的に中性的な体付きであったけれど。
時は確実に目の前の弟子を成長させた。
細さだけはさして変わらぬ身体は、
それでもまろやかな柔らかさと丸みを持ち、
最早誰も彼女を男だと勘違いする事もない。


「口調なんぞは相変わらずなもんだが、
黙ってりゃそれなりの女に育ったもんだ。
特に腰のあたりがな。」

「素直にイイ女って言えねぇの?
つーか腰撫でまわすな。昼間から盛るな。夜にしろ。
俺が何で朝から掃除したりしてると思ってっかな、この人は。」


マトリフの揶揄を含んだ褒め言葉に機嫌を直し、
腰で動く手を軽く叩いてポップはクスクスを笑みを零す。
今日は、仲間の集まる日。
大戦の後、それぞれ進む道は違うものになったけれど、
それでも仲間は仲間で。
誰が決めたのかそれすらも定かではないが、
何時の間にか二月に一度は日々の忙しさの合間を縫って集まるのが慣例となった。
まさか忘れていた訳ではないだろうと確認するポップに、
マトリフはこれ以上ないくらい大袈裟に溜息を零し面倒臭いなと吐き捨てれば。
言葉ほど面倒臭がっている訳でも、不快に思っているわけでもない事を知っているポップは、
何処までも素直じゃないと呟いて、これ以上ないくらい愉快そうに笑みを深める。


「全く、本当にイイ女に育ったもんだ。」


首に手を絡めクスクスと今だ愉快そうに笑うポップを抱き起こし。
そう紡いで艶やか唇に触れれば。
ポップはキョトンと一度その目を大きく瞬かせた後、
極上の笑みと甘やかな声で謳った。


「イイ男が育てたんだから当然だろ?」




















そんな甘い蜜月の様な時間を過ごす外で。
約束の時間よりも早く着いた仲間達が。
声も掛けれず居た堪れない時間を過ごしてるのも。
実はお約束だったりするのは。

秘密の話。


「・・・・・・・・・・・毎回思うんだけどコレ何の試練?」

「って言うか、そろそろ時間より早く着くのやめない?」

「それじゃつまらないじゃないっ!!!」

「・・・・そう言う問題じゃないと思うんだけどなぁ・・・・」





And a fortunate end!


3周年御礼企画第一弾は
『Even if it exceeds a time』の番外編でお送りしました。

『Even if it exceeds a time』本編の数年後設定で、
甘々
ほのぼの
師匠のセクハラ
を取り入れさせて頂きました。

いえ、まぁ、セクハラに関してはあんまり・・・・ゴニョゴニョ・・・でしたが;

『Even if it exceeds a time』は姫宮の想像を遙かに超えたご支持頂いて、
本当に驚くと共に感激しております。
出来るだけ完結まで手を止める事無く頑張っていこうと思いますので、
どうぞこれからも宜しくお願い致します。
本当にありがとうございました。



*この作品は、無期限でフリーとなっております。
悪用厳禁、一般マナーさえお守り頂ければ報告も無用です。(報告頂ければ嬉しさで小躍りしますが/笑)
どうぞお気に召しましたらばお持ち帰り下さいませ。



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