以前とか比べ物にならないほど緑豊かになった天空城の、
その中庭にある大きな世界樹の真下。
当たる日の光も、時折撫でる風も心地よいその場所は。
密かに彼の気に入りの場所の一つ。
それを知っているポップは迷う事無くその場所へと足を運び、
そうして、彼を見付ければ。
大きな幹に寄りかかる彼の前へと近付き顔を覗き込んだ。
「・・・・・・・お前、何してんの?」
「特に何もしてないケド。
と言うか、キミこそ何してるのサ?」
しいて言うなら日光浴。
ただそれだけダヨと紡ぎ。
キルは己の投げ出した足の上に、
わざわざ正座までして座るポップに呆れ混じりの視線を送る。
尤もそんな視線など今更気にもしないポップだから、
言外の非難は無駄に終わるのだけれど。
予想通りふーんと気のない返事をするポップにキルが苦く笑えば。
特にリアクションもなくポップはそう言えばと言葉を続ける。
「ヴェルザーが呼んでたぜ。」
「知ってる。」
「いかねぇの?」
これはまた随分と珍しい事もあるもんだと、
僅かに驚いた面持ちで自分を見るポップの表情に薄く笑って。
それからキルはだってと嫌そうに眉を顰めてみせる。
「どうせ今精霊の王でも来てるんデショ?
挨拶とか面倒だしネェ・・・・」
「面倒なのは同感だけど。
でもあとでヴェルザー怒るんじゃねぇの?」
「・・・・楽しそうに笑いながら言うセリフじゃないヨネ。
どうせボクが叱られるのを想像したんだろうケド、
残念ながら想定内だと思うヨ。」
ニヤニヤと笑みを浮かべるポップの鼻を軽く抓み、
皮肉に笑ってそう答えれば。
不貞腐れながらも正座を崩し膝の上に座り直すポップの仕草に、
キルは愉快そうに肩を揺らして笑う。
そうして、実際にと言葉を続ければ、己を見るポップの額に一つ口付ける。
「ボクはあんまり必要ないんダヨネ。
精霊の王としちゃ竜の神のボクよりも、
人間の神であるヴェルザー様と話す方が大事だし。」
その言葉に納得したのかあぁと呟いて、
ポップはちらりと一瞬謁見の間の方へと視線を向ける。
清浄な気を好む精霊が魔界よりも地上に多く存在するのは当然の話だ。
そうなれば、
精霊の王としても人間の神として地上を統べるヴェルザーとの会話の方へ重点置く。
彼らの会話を聞いた事はないけれど。
恐らくは、人がむやみに精霊の住まう地へと迷い込まぬ為の結界や。
人と精霊のバランスなどその辺の話をしているのだろう。
それもまた当然の話なのだが。
「お前、それでいいの?」
それではお前は必要ないと言われている様で気にいらない。
何処か不愉快そうに紡がれたその言葉に。
珍しくも目を瞬かせ、次いでクツクツと愉快そうにキルは声を上げて笑う。
そもそも自分は懐が狭い事を自覚している。
君主であり半身とも言えるヴェルザーは別として。
興味も関心も情も目の前の彼以外にはない。
そんな自分が他の誰に関心を払われなかったとしても、
それは寧ろ喜ばしい事だと言うのに。
それを不快だと告げる彼はどうしてこうも自分に甘いのか。
これだから、愉快で仕方ない。
これだから、手放せない。
彼だけが、今まで知りえなかった甘やかな感情を与えてくれるのだから。
「竜種と精霊は元々そう悪い関係じゃないんだ。
今でこそ言葉を解する竜種は少ないケド、存在しない訳じゃないし、
少しずつ増えてるしネ。」
そのうちキミ曰くボクも必要になるんじゃないカナ?
自分への不満から益々眉を顰めたポップへと、そう笑んだまま告げれば。
納得したのかそれとも興味を失ったのか、
ふぅんと小さく呟いて身体を預けてくるポップを受け止めて、
キルは視線を合わせ笑みを深める。
「・・・何処かに出掛けようカ?」
「珍しいなぁ、マジで。」
「ここに居るとそのうちお呼びが掛かりそうだしネェ。
今は挨拶とかする気分じゃナイんだ。」
「職務怠慢って言うんだぞ、そう言うの。」
「何とデモ。
ボクは今凄く気分がイイんだ。
そんな時にお仕事なんてバカらしいと思わないカイ?」
尤もキミと居れば何時でも気分がイイのだけれど。
そんな風に笑って告げれば。
呆れつつ、それでも何処か照れた様に恥ずかしいヤツだと笑うポップの髪に触れる。
そうして。
「ボクにはキミだけ居ればイイんだ。」
そう、柔らかく囁いて。
小さく笑みを刻む唇に口付けた。
The eternal theory of you and me
3周年御礼企画第二弾は
死神シリーズのキルポプでお送り致しました。
時間軸的には大魔道士の帰郷の少し後くらいで。
甘々
ほのぼの
を取り入れさせて頂きました。
公害級のバカップルも入れたかったのですが、入らなかったorz
力不足で申し訳ない限りです;
長らく更新が止まっているキルポプですが(本当にすいません;)
沢山の御支持を頂き本当にありがとうございます。
時間は掛かるかもしれませんが、きちんと完結はさせますので、
どうぞこれからも宜しくお願いいたしますっ!(礼)
*この作品は、無期限でフリーとなっております。
悪用厳禁、一般マナーさえお守り頂ければ報告も無用です。(報告頂ければ嬉しさで小躍りしますが/笑)
どうぞお気に召しましたらばお持ち帰り下さいませ。
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