「…今朝、変な夢を見たんですよ。」

決して広くないキッチンのテーブルに座り、ポップは頬杖を付きながら呟いた。
今この場所にいるのは彼と彼の師であり、今は共にダイの捜索に出てるアバンの二人だけ。
その彼はと言えば、明日の朝食の仕込みなのか、宿屋のキッチンを借り
ポップに背を向けたまま何やら忙しそうにしている。
別に返事が欲しくて言った訳ではなくて、何となく出てきた独り言だったから、
ポップはそのまま口を閉ざして彼の背中を見つめた。
リズミカルに刻まれる包丁の音が妙に心地好く感じられる。

「…どんな夢だったんですか?」
相変わらず手は動いたままアバンは振り向かずに聞く。
「ん〜、先生がダイを見つけてパプニカに戻る夢。」
「…それはいい夢じゃないんですかねぇ?」
背中越しにアバンが苦笑しているのが分かるけれどポップは、変わらず頬杖を付いたまま溜息を吐く。
「ダイが戻って皆やったな。良かったって喜んで。俺ももちろん嬉しかったんだけど。
もう先生と旅出来ないんだって思ったら、何だか素直に喜べなくて。」

目が醒めた時、気持ちがもやもやして仕方なかったのを覚えてる。妙に淋しくて、腹立たしかったのだ。
ね、変でしょ?とポップは言葉を紡ぎ、そのままテーブルに視線を向けた。
何故だか、アバンの背中を見ていられなくて。


暫しの沈黙がキッチンを支配し、そろそろ部屋に戻ろうかと思った時、
ふわりと暖かい湯気がポップの鼻腔を擽った。
「紅茶でもどうぞ。」
顔を上げれば、目の前には暖かい紅茶と何故か笑顔のアバン。
「先生、何で嬉しそうなんですか?」
歓ばせる様な事なんて一つも言った覚えはないのに。
ティーカップを持ちながら疑問に首を傾げ、聞いてみるがアバンは笑ったまま、
それには答えず隣の席に腰掛けた。
「先生?」
「なんです?」
何で嬉しそうなんですか?と聞いても気のせいですよと笑うだけで。
「アバン先生!笑ってないで答えて下さいよ。」
いくら聞いてもただ笑うだけで答えてくれないアバンに、ポップはいよいよ本気で不貞腐れる。
そんなポップの態度にアバンは苦笑を浮かべ。
「いえね。貴方も凄い口説き文句を使うなと思いまして。」
そう言葉を続けた。
「はぁ?からかってるんですか?」
ティーカップをテーブルに置き、そっぽを向くポップの様子にアバンは小さく笑うと、
そっと近寄り耳元で囁いた。

−少しは自惚れてもいいんですかね?−

「…えっ…えっ?!」
彼の言葉と仕草に真っ赤になって振り向けば、悪戯な瞳がポップを捕らえる。
「やっぱり自覚なしですか?」
「だ、だって!先生がいきなり変な事言うからじゃないですか!」
「ダイくんが見つかって嬉しかったんでしょう?」
「…はい。」
「でも私と旅出来ないのが寂しかった?」
「…それは…」
「違うんですか?」
ダイが戻ってくる。それは本当に嬉しい事だった。
けれど、それは旅の終わりを意味していて。
そうすれば、自分の師はカールに戻ってしまうだろう。

その事が寂しかったのかと今更に自分の感情を理解して。
ポップは困った様にアバンを見る。
「あの…先生。俺…変な事言って…すいません……」
こんな気持ちは迷惑だろうと小さく謝罪の言葉を口にすれば、
俯くポップの頬を両手で優しく挟みアバンはくすくすと笑った。
「どうして謝るんですか?言ったでしょう?自惚れてもいいんですかって。」
「…先生。」
「貴方が好きですよ。ポップ。
貴方が私を思ってくれるより、ずっと前から。」
昔から貴方は自分の事には鈍いんですからねぇと、
驚いた顔のポップにウィンクするアバンの頬も少し赤くて。
ポップは恥ずかしさについ視線を逸らした。
「こっちを向いて下さい?」
「…恥ずかしいから嫌です…」
「向いてくれないとキスしますよ?」
「…先生って意地悪ですよね…」
上目遣いに軽く睨んでも、赤い顔のままでは迫力も何もなくて、
アバンは益々笑みを深め愛しそうに囁いた。
「…貴方が愛しくて仕方ないのに、貴方と離れるわけないじゃないですか。」
「そんな事言われたら…俺の方が自惚れますよ?」
「どうぞ?事実ですからね。」
貴方以上に私が貴方と離れたくないんですよ。
そう囁く声にポップは幸せそうに瞳を閉じる。

ゆっくりと重なる唇に幸せを噛み締めながら。


END




あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!誰ですか?!こいつら!!

たまには甘いのでも書いてみようと思ったのがそもそもの間違い…
何回も書き直し、更新すら遅くなったしぃOrz
いえ、アバン先生はきっとずぅぅぅぅぅぅぅぅぅっと前からポップを好きだったと思うのですよ。
んでポップが自覚してくれるのをずっと待ってたんじゃないかなぁと。
まるで光源●の様にww
そんな話が書きたかったんですが、伝わりましたか…?
少しでも伝わって頂けたらこれ幸い。
楽しんで頂けたらもっと幸いですw

…でもずっと前からって事はアバン先生ってショ●…
すいませんごめんなさい何でもないです…


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