「う゛〜、アタマ、痛ぇ…」
頭の奥では、大音響で鐘が打ち鳴らされているかのような酷い頭痛。
ついでに、目の奥では色とりどりの火花が飛び散って、軽いめまいを感じる。
明らかな二日酔いの症状に、ポップは目を瞬かせ、盛大に顔をしかめた。
「あれ?昨日は、確か、姫さんとこで宴会があって……うわぁ、記憶がねぇ…」
思い出そうとしても、頭痛に邪魔されて大した成果は生まれない。
それどころか、自分がどうやってここまで帰って来たのか、いつの間に寝間着に着替えてベッドに潜り込んだのか、記憶が一切ないのだ。
うっすらと思い出したのは、昨日、くだらないことで喧嘩して、ささくれ立った気分のまま出かけた宴会で、自棄になって盃を重ねたこと。
それも、記憶をなくすくらい大量に。
元々、酒にはあまり強くない方なのに、一体、どれだけの量を飲んでしまったのか。
それに、とても自力で帰れそうにないほど酒を飲んだ自分が今ここに無事にいるということは、どう考えても、誰かの助けがあったと
いうことで、その誰か、なんて昨日の喧嘩相手ただ一人しかいないということで…。
「……いてぇ」
治まる気配を見せない頭痛と、何とも情けない状況に、ポップは泣きそうになる。



「自業自得だ。バカタレ。」
いつの間に部屋に入ってきたのか、マトリフの掌には、温かな湯気の立つマグカップがあった。
とりあえず、怒ってはいないようだ。
マトリフの声からそれを察したポップは、内心、安堵する。
「…師匠、何飲んでんの?」
「二日酔いに良く効く薬草茶だが、お前も飲んどくか?」
ひょい、と差し出されたカップには、どんな薬草を煎じたのかどす黒い液体が顔を覗かせている。
それは、ほろ苦く芳ばしい香りがした。
「…苦い?」
飲むべきか飲まざるべきか、それが問題だ。
思案しながらポップは尋ねる。
「…うまくはねぇな。」
マトリフも、ちびちびと飲みながら眉を顰めている。
「じゃあ、一口。」
良薬は口に苦し、とポップは手を伸ばした。
受け取ったカップの中身は見ないようにして、ほんの少し口に含む。
その瞬間、口中に広がる何とも言えない渋みと苦味に、ポップは絶句した。
口を押さえながら必死に飲み下すが、口の中から味が消えない。
「……苦ぁ。」
くくっと笑いながら、マトリフは、ポップがぞんざいに押し戻したカップを受け取って口を付けた。
――あ、間接キスだ…。
痛みに霞む頭でぼんやりと考えた内容のあまりの恥ずかしさに、ぶんぶんと頭を振れば、くわんくわん、と音がしそうな程の
強烈な頭痛に襲われる。
「何やってんだ、お前…」
マトリフの呆れたような声に反応する気力もない。
自分でも、昨日からの自分に突っ込みを入れたい気分なのだから。
「もう、俺、しばらく酒は見たくもねぇ…」
ベッドに突っ伏しながら、ポップはうめく。
「あぁ。そうしてくれるとありがてぇな。」
マトリフの含みのある言い方に、ポップは、ふと嫌な予感を覚えた。



「……師匠、昨日の事、覚えてる?」
ちらりと見上げて、恐る恐る聞いてみると、にやり、と意味ありげな笑いとともに、不穏な答えが返される。
「そりゃあな。何だ、お前、あれだけ情熱的に迫ってきたってのに、覚えてねぇのか?」
「じょ、情熱的って?」
おおよそ、宴会とは無縁と思われる単語の登場に、ポップの嫌な予感はピークに達した。
この先を聞いて良いものか否か、一抹の不安を覚えるポップには構わず、マトリフは愉しそうに続ける。
「人前で抱きついてくるわキスはせがむわで、大変だったんだがなぁ。」
「えぇッ!?何だよ、それぇッ!」
全くもって記憶のない事実に、ポップは慌てる。
「まさか、師匠、それで…」
何事もなかったと言ってほしいという儚い願いはすぐに打ち破られた。
「美味しく頂いたに決まってんだろ?」
当然とばかりに言い放つマトリフに、ポップは愕然とする。
「嘘だろぉ〜!?……ってぇ…うぅ。」
叫んだ拍子に、ズキンと頭の芯が思いきり痛んで、ポップは思わず唸った。
「据え膳食わぬは男の恥ってな。」
「あんた……ほんと、性格、悪ぃ……」
飄々と答えるマトリフを恨めしげに睨むが、何の効果もないようだ。
それにしても、酒の席とはいえ、一体、自分は何をやらかしてしまったのだろうか。
パプニカの国主による冷やかしやら好奇心丸出しな根掘り葉掘りの詮索やらを想像したポップは、げんなりとした顔になる。
「もぉ、俺、しばらく、城に行けねぇよ……」
二日酔いが残る上に更なる問題の発生に頭を抱えるポップとは逆に、企みが成功したマトリフは満足そうに上機嫌で笑った。









盆とクリスマスと正月が一編に来ましたよ、お嬢さん!!!!!
(←煩い)

ありがとうございますっ!ありがとうございますぅぅぅぅぅぅ!!!!×∞
なんか、前も同じ様なお礼の仕方で書いた様な気もしますが、
ボキャブラリーの少なさが本気で露見しますが。
ありがとうございますぅぅぅぅぅぅ!!!!

まさか後日談まで頂けるとは…感激ですっ!
間接チューとか、かわゆすぐるvvvvvvv
師匠の意地の悪さもまた堪らんですっ!

涼崎様、本当にありがとうございましたっ!!!



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