ハラリハラリと役目を終えた葉が落ちる。
涼やかなな風は夏の終わりを告げ。
もう直ぐ、秋が来る。
過ごし易くなった季節の風を感じながら。
彼は一つ決意して、その場を目指した。


大魔道士の帰郷0


カツンと小気味良い音を響かせ、ポップはその部屋を目指した。
正確には部屋ではなく、謁見の間なのだけど。
今のこの城には殆ど人がいない以上、そして其処でこの城の主人達が一日の大半を過ごす以上、
其処はただの部屋だとポップは認識いているから、彼は遠慮なしに謁見の間にノックなしで押し入った。


「ヴェルザー、居る?」

「・・・・その前にノックなりする気はないのか、そなたは。」


居ると確信した上で、此方の都合すら構いなく入ってくるクセに何を今更。
そう言わんばかりの呆れた様子でヴェルザーはポップを出迎えた。
もっとも苦笑いを浮べるヴェルザーも言葉ほど呆れてはいなく、
寧ろ、慣れているのか精々小さく嘆息する程度ではあったけれど。
そしてその嘆息すら慣れているのか、ポップもまた相手の様子を気にするでもなく話し始める。


「精霊の王と妖精界から、話し合いの場所が欲しいって言われたんだってな。」

「相変わらず耳の早い事だ。」

「つーか放っておいても話す奴がいるからさ。」


筒抜けなのよねと悪びれずに笑うポップにヴェルザーは再び大きく溜息を吐いて見せた。
ポップではなく己の側で先程まで話をしていた、もう一人の己に向けて。
尤もそのもう一人の己ですら、肩を竦め苦笑を返すだけで反省の色すら見えないのが
ヴェルザーのここ一番の悩みなのだけれど。


「お前も少しは黙っておく事が出来んのか・・・?」

「努力はしてますケド。黙っていても勝手に調べるんだから話しても変わりないと思いますヨ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「キル〜、ご主人様が呆れてんぞ〜?」

「間違いなくキミが元凶なんだからサ。少しは悪いと思いなヨ。」

「別に頼んではいないだろ?聞きたいな〜って言うだけだし。」

「そのオネダリが一番タチ悪いって自覚した方がイイよね。本当に。」

「あ、その辺は自覚済みだから問題ない。」


痴話喧嘩なら別の場所でやれ。とか、話を続ける気がないなら出て行け。とか。
言ってやりたい事は山の様にあるのだが、取り合えずそれを押し留めて、
ヴェルザーは米神を押さえつつ二人と睨み付けるだけに済ませた。


ゴメンと片手を挙げて苦笑するポップの姿にヴェルザーは仕方ないと溜息を零して苦笑する。
遠慮なしに入ってくる姿も、きっと恐らくもう見る事は殆どなくなるだろう。
いずれ遠からぬ未来、幻獣や精霊がこの地に戻ってくる。
そうなれば、彼は今の様に気安く入ってくる事もなくなるだろう事をヴェルザーは理解していた。


神と呼ばれる守護者と竜の騎士は、厳密に言えば同格なのだけれど。
それは自分達だけが知っている事であり、
無駄な混乱を招かぬ為にも、これからも口外する事はない。

人の神と竜の神が和解し、天に竜の神が戻った。
そう思われている方が良いのだ。

そして彼は。
かつて人と竜と魔の神が作り出した竜の騎士。
そう思われているのだから。

この天空の城を出奔する事はないだろうが、この様に明け透けなく尋ねてくる事もなくなる。
歳以上に聡く物事を見据える彼は、間違いなく臣下の礼を取るだろう事をヴェルザーは知っていた。

それが残念だと内心小さく歎息し、彼は未だなにやら言い争いを続ける二人に視線を戻した。
結局の所ヴェルザーもまたこの自由奔放な彼が気に入ってるのだ。


「それで・・・・・?結局何をしに来たのだ。そなたは?」

「あぁ・・・忘れてた。」


ポンと手を打ってポップはキルからヴェルザーへと視線を戻す。
そうして僅かに不満そうなキルを視界の端に捕らえ、未だに己にちょっかいを出すその姿を一瞥してから。
ポップはゆっくりとソレを伝えた。


「俺、里帰りしようと思ってさ。コレ連れて。」


















「・・・・まったく・・・本当に突然何かを思いつく奴だ・・・」


何を言い出すのかと驚く間も、質問する間も与えず、
それだけ告げれば風の如く飛び出した姿を思い返し、ヴェルザーは玉座に身体を預け一人呟く。
酷く愉快そうに。

突然と言えば突然な行動であったけれど、
彼が行う事なのだ。
何かしらの理由があっての事だろう。

そしてそれが何かまではわからなくとも。
今は知る必要はない事もヴェルザーは理解している。


いずれ彼はソレを話すのだから。
ヘラリと笑って土産話と共に。
事も無げに。

だから今は知る必要はないのだ。
そう考えてヴェルザーはゆるりと視線を外へと向ける。
酷く愉快そうに。


「・・・・にしても。アレの動揺する姿を見たのは初めてだな・・・」


説明もなく連れて行かれた半身の、
始めて見る硬直した姿を思い返し。
そうして、二人が戻った時の喧騒を予想し、

天空の城の主は静かに笑った。



to be continued

更新がすっかりご無沙汰で申し訳ありません;

えぇもう。またPCが壊れました・・・orz
しかも今度は修理不可能な状態まで・・・

流石にいきなり買い直しも出来ず、更新も出来ませんでしたが;
漸く復活です。
NEWPC花子ちゃんと共に出来る限りの更新頑張ります!

そして、今回から始めました大魔道士の帰郷。
とりあえずはヴェルザー様から。
まだ里帰りしてませんがプロローグみたいなものと解釈して頂ければ幸いです(汗)

これから里帰りして色んな人に会えたらいいなぁと思ってます。
まずは実家かパプニカか・・・
まだ構想中ですがあまり遅くならずに更新出来る様に頑張るので
よければまた見てやってくださいませ。



ちなみに今回からのシリーズ。
姫宮的副題は「ボクたち結婚します」だったり(笑)


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