「よっ・・・・と。」

幾重にも積み重なった本を抱え、ポップは踏み台を上る。
何せ本の虫が2人も居るのだから、この家の本の数は計り知れなくて。
乱雑に散らばった書物の数々に、いい加減整理をと思い立ったのだ。

種類別に分類し、手際よく片付けるポップの後ろでは、
マトリフが立ったまま本を読んでいる。
無理やり片付けに参加させたのはいいものの、
何か興味を引かれる書物でも発見したのだろう。
微動だにしないマトリフにポップは
呆れた様に小さく溜息をついた。

「手伝うんじゃなかったのかよ・・・」

そう言いながらちらりと視線を向ければ。
滅多に見せない真剣な面持ちにほんの少し胸が突かれた。
ぱらりと本を捲る指は無骨だけど男らしい大人の手で。
普段は中々見れない姿についつい見入っていると。
突然本を見ていたはずの視線がぶつかった。

「・・・何見てんだ?」

そう言って苦笑する彼の眼差しは緩められ。
柔らかいものへと変わる。


その瞬間。
大きく心臓が跳ねた気がした。




「〜・・・っ!なんでもないっ!!」

不規則に跳ね続ける鼓動を自覚しながら、乱暴に本を下へ置いて、
訝しげな表情を浮べるマトリフに背を向け、台所へ飛び込んだ。

なんだったんだ?と眉根に皺を寄せるマトリフを残して。










まずい。
非常にまずい。
マトリフを残し、勢い良く飛び込んだ台所で。
それこそ一気に水を飲み干して。
ポップは漸く自分の置かれた状況に、しゃがみ込み頭を抱えた。

今頃、可笑しなヤツだと呆れているに違いない。
自分でもそう思うのだから。

それでも、思わず逃げ出してしまったのだから仕方ないと
言い訳じみたことを呟いてポップは溜息を零す。
何度も深呼吸を繰り返し、
漸く落ち着いてきた心臓に手を当てて。


師と弟子としては長いけれど。
いわゆる恋人としてはまだまだ日も浅い。
そんな関係だから、時々焦ってしまうのだ。

今までは決して見せなかった、
その仕草に。
眼差しに。


「・・・・・あぁもう。ダメだ。」


思い出しただけで再び跳ね出す鼓動を抑え、
自然と緩くなる頬を両手で押さえ、
ポップは何度目かの溜息を零した。


中途半端に片付いた部屋は気持ち悪い。
一度始めた以上は終わらせたいのだけれど、
あの部屋には、マトリフがいる。
そうして、きっと聞くのだ。
「どうした?」と。
あの柔らかい眼差しで。


そんな姿を見せられたら、
自分の心臓はまた落ち着かなくなるに決まってるのに。


「こんな事なら片付け手伝わすんじゃなかった・・・・」


今更言っても遅いのだけれどと呟いて、仕方なしにポップは立ち上がる。
突然飛び出した事への言い訳を考えながら。

無骨だけれど男らしいその手に。
自分だけに向けられるその眼差しに。

こんなにも囚われるなんて。
見惚れただなんて。
悔しいから、絶対にバラすものかと誓いながら。

それでも、何度でも見惚れて、
囚われる事を自覚しながら。

マトリフの居る部屋へと歩み始めた。




見惚れて、囚われて、惚れ直す。
自覚してても止められないこの気持ちは末期症状。


一生治らない不治の病なのだ。



END



久々のお師匠様です!
やっぱマトポプ好きだぁぁぁぁぁっ!!!!!!(落ち着け)

キルポプでは中々書けない子供らしいポップも好きだ!!!!(だから落ち着け)

暫くぶりなのでちっと短い上に師匠あまり出せませんでしたが、書いてる本人だけは満足しました。

姫宮の書くキルポプではどうしてもポップは大人びてしまうので、
こう歳相応に照れたり慌てたりできるのはお師匠様だけになってしまうんですよ。
まぁ、何が言いたいかと申しませば、
やっぱりマトポプもいいよね!って事です(笑)

ここまで読んで頂きありがとうございました!(礼)

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