カチカチと規則正しく時を刻む針の音に、マトリフはふと読んでいた本から顔を上げる。
時計の針は丁度10時を指している。
今日は彼と同居している弟子はいない。
久しく集まった仲間達と会うためにパプニカ城に出かけて行ったのだ。
師匠もどうだと誘われはしたが元々人付き合いが嫌いな上、城などと言う窮屈な場所など
まっぴらなマトリフはさっさと行けとポップを追い出した。
普段はいつの間にか住み着いた弟子のせいで騒がしい洞窟も静かで。
久しぶりの静かな時間を堪能出来ると思っていたのだが、逆に気持ちが落ち着かない。
「…あの馬鹿おせぇな…」
誰に弁解するでもなく呟いて、マトリフはガシガシと髪を乱暴に混ぜながら、困った様に溜息を吐いた。
この所、自分で自分の感情を持て余す事が多い。
理由などは分かってる。
分かっていても伝える事に躊躇するからこそ、
これほど感情を持て余すのだ。


ガキで甘ったれで矜持だけは高いくせに臆病で。
良い所なんか一つもなかった。
ないように見えた。
少しでも強くしてやらねばと思ったのは、
彼がかつての仲間の弟子だったから。
共に魔王を倒すために戦った勇者への
せめてもの手向けと。
ただそれだけの理由だった。

けれど、彼は何度も死線を潜り抜け、
何度も立ち上がった。
時には命すら惜しまずに立ち向かう彼を
見直した時、絶対に死なせたくないと思った。
自分の知りうる全てを託し、
いかなる敵にも負けぬ様にと。
それは弟子など取るまいと思っていた自分にとって
酷く珍しい感情だったのを覚えてる。
大魔王と対峙するほんの少し前、彼自身にも伝えたが
本当に自分の子の様で誇らしかった。
いや、子の様だと思っていた。


若返るまでは。



どうやら、この感情は肉親の情に近い感情でも
ましてや友情でもないとまったく別のものだと気付いたのは
かつての勇者の悪行で若返ってからの事。
若返る事さえなければ、
弟子の成長を誇らしく思い満足したまま逝く事も出来ただろうにと、
マトリフは思う。



けれど一度気付いた感情をなかった事になど出来るはずもない。
長く、久しく味わう事のなかった一筋縄ではいかぬこの感情。
伝えてしまえばどれだけ楽なのだろうかと、そう思わないわけではないけれど。
まだ若く、先のある愛弟子の未来を奪うような気がして。
かと言って、他の者が愛弟子と仲良くしてる姿が面白いはずもなくて。




「…何をやってんのかねぇ。」
いい歳のくせにと、自嘲気味に笑い揺り椅子に背を預ける。
と、寄り掛かったのもつかの間、洞窟の入り口で起こった派手な着地音を耳に捕らえた。
最近は多少はましになったルーラの着地も、酔っていれば昔と変わらぬ下手なままで。
マトリフは酔った弟子を迎える為やれやれと立ち上がる。



「ただいま〜、師匠〜」
「…おう、おかえり…」
飲み過ぎだと軽く頭を小突きながら、千鳥足のポップに手を貸してやれば
痛いと頬を膨らませながらもしっかりと手を掴む。
「明日は二日酔い決定だな。」
「うぇ〜〜〜やだなぁ…」
「自業自得だ、馬鹿たれ。」
「なぁ…師匠…」
「なんだ?」
「…次は師匠も一緒に行こうぜ…?」
「誰が行くか。」
何て事のない日常の何て事のない会話。
けれど、それでも満たされる何かかそこにはあり。
いつか口の出してしまうかもしれぬ感情にほんの少しだけ蓋をして、
マトリフは酔っ払いのお守りは御免だからなと悪戯に笑って見せた。


今はもう少しこのままで。






END





…やっとこさ続きです;(平謝り)
UPが遅れて申し訳ありません
理由はですねぇ・・・・



3月某日

「さ〜〜て、マトポプもそろそろ書き終わるし〜
UPしたら何書こうかなww
ダイポプかな〜?アバポプかな〜?」

  などと浮かれていたアタクシはコーラを取りに行こうと台所へ向かいました。
そこで悪魔が訪れたのでゴザイマス…

行き成りバチン!!といい音がしたと思うと台所は暗闇に・・・
「…なに?」
軽く呆然とするアタクシの背後から旦那の声が聞こえます。
「悪い!ブレーカー落としちゃった!!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
何ですとΣ( ̄口 ̄;

って事はPCは?!
慌ててPCの元へ走り、状態を確認します。
「最悪書きかけのマトポプ小説消えててもいいから!!
お願い!動いてぇぇぇ!!!」
そんなアタクシの血の叫びも虚しくまったく起動しないPC・・・・
壊れてやがりました(泣)
そんな訳でUPに大変時間がかかってしまいました;

修復も済み元に戻ったので次からはもうちょっと早いと思います。
頑張りますので見捨てないで下さいね(切実)

最後になりましたが読んで頂きありがとうございました!

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