本人の前では絶対言わないけれど。
それは心の底から思える本音。






ごほごほと咳を繰り返し、マトリフはその体をベットに横たえた。
重くなった体。自由の利かない手足。
最近では立つ事すら辛くなったその体は、
いよいよ人生の終わりを訴えているのだと分かる。
それでも、まだ死ねない。
たとえ往生際が悪くとも。
生涯でただ一人の弟子が帰還する姿を見るまでは。


あいつを拾った時はこんな風に思う日が来るとは思わなかった。


『あんたが出来る事は全部俺が覚えてみせる。
だから・・・・もう無茶する必要はないんだ、師匠。』


それはメドローアを授けた時、弟子が言った言葉。

それがどれだけ胸に暖かいものを与えてくれたか、
今正に大魔王と対峙している弟子は知らない。

本当は。
戦いに送り出す事などしたくなかった。
決して負けるなと思いつつ。
それでも勝ち目の少ない戦いに喜んで送り出す事など誰が出来ようか。

自分の持つ最強の呪文を授ける事ですら、
抵抗があったと言うのに。
けれど。
年若い弟子は、たとえメドローアを授けなくとも戦う事を止めなかっただろう。
禁呪を駆使し、
自分の寿命を縮めても。
故に、それを教えた。
決して死んで欲しくはなかったから。


ドォンと爆音が響き、大地が揺れる。
その衝撃にぐっとマトリフは胸を押さえた。
込み上げる嘔吐感を堪えれば、
じわりと口の中に鉄錆の味が広がる。

「・・・まだだ。」

まだ死ねない。
我ながら往生際が悪いとは思うけれど。
もう少し。
もう少しだけ。
ただ一人の弟子の無事を確認するまでは。


大魔王と戦う世界の英雄。
彼らの無事を見届けるまでは。


ゼィゼィと鳴る荒い呼吸を宥め、マトリフは小さく呪文を紡ぐ。
ゆっくりと全身に行き渡る魔法力に徐々にではあるが呼吸が落ち着いていくと、
緩慢とした動作でマトリフは立ち上がる。

まだ死ぬ事は出来ない。


幾度となく続く爆音と大地の揺れは、
最終局面の証。
すでに大魔王と対峙しているであろうと思い、
マトリフは鉛の様に重い体を引き摺り、表へと向かう。
そうして、遥か上空に浮かぶ強大な城を見た時、
声が響いた。

世界中の祈りが。
願いが。
英雄たちの声が。
大魔王と戦ってきた映像が。
駆け抜ける---------------------

脳裏に浮かんでは消えるその壮絶な戦いに、マトリフはにやりと口の端を上げる。

『一瞬!!だけど・・・・閃光のように・・・・!!』

あぁ。そうだ。
最後の一瞬まで。

『まぶしく燃えて生き抜いてやる!!!』

生きる事を諦めない。

『それが俺たち人間の生き方だ・・・!!』

「・・・・良く言った・・・・」

満足気な笑みを浮かべマトリフは空を見上げる。

このままあっさり死ぬなんて、
俺の性分じゃねぇ。
そうだろ?

このまま何もせず、死を待つだけなんて性に合わない。
誰かが与えた平和を甘受するなんて真っ平だ。
ならば、
自分の最善を。
平和を噛締めるのは若い奴らの方がいい。

北の果てへ視線を移し、呪文を紡ぎ。
マトリフは小さく呟いた。


最後まで諦めない姿。
それが誇らしいなんて本人の前では絶対言わないけれど。
それは心の底から思える本音。


「・・・・本当に自慢の弟子だぜ。」



END



なんかもう尻切れトンボ・・・・(T-T)
何が書きたかったんでしょうか・・・・orz

いえあの時、師匠はもう本当に死に掛けてたんじゃないかなと
姫宮は思ったのです。

きっともう長くなくて、ゆっくり死んで行くだけの時間。
それを彼は自分の弟子と勇者の為に使ったんじゃないかなって。
たとえば塔を凍らした後、そのまま死んでも悔いはない。くらいの気持ちだったんじゃないかなぁって。

・・・・問題はそれを書くだけの文才がないって事ですね・・・・・゚・(ノД`;)・゚・


あのぉ・・・鴉様。
こんなので良かったですか?
返品可でございます!!!(土下座)

本当に実力不足で申し訳ないです!!

ほんとにほんとに返品可ですので!!!!!(逃走)

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