※こちらは死神シリーズ設定のキルポプです。





キミを喩えるなら、


一片の花。




一片の曇りもない月夜。
テラスで静かにそれを見上げるポップの姿を視界の端で見てとり、
ベッドに横になりながらキルは鬱蒼と溜息を吐いた。


「・・・なんだってそう月が好きカネ。」


ぽつりと呟く声はもちろんポップには届かない。
勿論、その苦々しく笑う表情すらも、見える事はないと知っての事なのだけれど。


雲より遥か高いこの天空の城では月の光は遮るものなく、
地上よりも柔らかい光を届けてくれる。
それを始めて見た時のポップは酷く喜び、
そしていつの間にかそれを眺めるのが習慣の様になった。


それが、本当は面白くない。


「届かないものを望まれても、それは助けてあげられないヨ。」


手に入れたいと望めば、喩え月でも手に入れる自信くらいあるけれど。
彼が望むのは月ではないと知っているから。


失くした過去。
失った友。

それを月に映し眺めるのだから。


「キミのお友達タチが居なくなってどれ位経つんだろうネ・・・・」


地上ではどれだけの時間が過ぎただろう。
かつて地上を攻めた大魔王の存在すらも誰も知らない。
古参の魔族なら知っている者も居るかも知れない程度の。
それだけの長い時間。


元は人間であった彼。
その彼がよく保っていると思う。

人は所詮人でしかなく。
永遠に生きるだけの精神を持ち合わせては居ない。

遥か昔、人から竜の騎士へと転じた彼だけれど。
精神は人であった彼のまま。
だからこそ、時々焦りにも似た焦燥感がキルを襲う。

苦笑しながら、
呆れながら。
その裏で恐れているのだ。

もう、駄目なのかと。


彼がもう生きて居たくないと、そう膝を折った時。
その命を駆るのは己の役目。

それは、かつての約束だから。

それでも。


「・・・まだ大丈夫。そう信じてるヨ。」


随分と甘くなったと自分でも思えるけれど。
何より信じていたいから。

のそりと緩慢な動作で立ち上がれば、キルは月に目を奪われたままの彼にそっと近付く。


「・・・・なんだよ?」


そっとその手を取ればポップは僅かに顔を顰めるけれど。
その表情は月を見る時よりもずっと普通で。
キルは小さく微笑む。


まだ、大丈夫と安堵して。


「寒いんだからそろそろ入ったら?」

「まだ平気だし。」

「ボクが寒いんだヨ。」


そう呟くと腕を引き寄せその身体を抱込めば、
胸元から聞えるのは溜息だけ。


「・・・・お前な・・・?」

「うん、言いたい事あるだろうケド。
・・・・今は・・・・黙って?」


そうして、キルは何だよと喚く愛しい彼の抗議の言葉を口付けで奪う。

失う恐怖を知ったのはいつだろう。
其れ位長い時間を共に過ごしたから。

日増しにソレは増長し、心を苛む。

ただ、恐ろしくて。









自分の隣で眠る姿にそっと手を触れ、
キルはそっと嘆息し苦々しく笑う。


「ボクは昔からキミには弱いんだ。」


どんな願いでも聞いてしまうくらい。
それがどれだけ心を引き裂いても。

キミの願いなら。


「でも・・・・」


出来ればそんな日は来ないで欲しいと自分も願うから。


「まだ、大丈夫だよね?」


ぽつりと紡がれる言葉は誰にも聞こえないものだけれど。
どうか、届いていて欲しい。

そう願わずにはいられないから。


キミを喩えるなら、
月明かりに咲く一片の花。

そして、ボクはソレを刈るのが役目。
あぁ、それでも。


花を刈る日が永遠に来なければいい。




END







たいっっっへんにお待たせ致しました!!(全くだ;/汗)

アイ様に送らせて頂くキルポプでございます。

タイトルからして長いですよね;

日本語訳ですと「君に月を、背中に死の鎌を」となる訳ですが。

・・・・今回死神様がポエマーです(爆笑)

うちのキルポプを大変気に入って下さっているとの
ありがたい、ひじょぉぉぉぉぉぉぉぉにありがたいお言葉を頂いたので、
いっそと思い死神シリーズの設定で書かせて頂いちゃいました。

ある意味迷惑?(ビクビク)


アイ様、当社比1.5倍くらい甘いキルポプですが、謹んで捧げさせていただきます。

こんなのでも良ければ是非受け取って下さいませ。


散々お待たせした上にこんなので申し訳ないです。
返品は可ですので!!



余談ですが、表で初の黒背景。キルポプは黒背景が似合うと勝手に思い込んでます。

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