師匠と弟子。
それだけの関係じゃなくなった、最初の年の。
俺の生まれた日に。

やる。

そう短く、でもアンタらしい言葉と一緒に渡されたのは小さな箱。
すげぇ驚いたね。
だって、アンタが誕生日とか祝ってくれるなんて、
普通考えつかないだろう?

アンタはそう言うの関心ないと思ってたから、
俺の生まれた日なんて教えた事なかったのにさ。
誰かに聞いたのか、
ソレとも調べたのか。


初めて師匠から贈られた、
シンプルな銀のブレスレットの誕生日プレゼントは、


今も、俺の腕にある。



The day when you and I were born






「・・・・・・・・・重い。」

「あ、起きた。」


特に用事もない穏やかな風の吹く午後。
ソファーで横になりまどろんでいたマトリフは、
腹にかかる重みに嫌そうに眉を寄せ目を開けるよりも早く口を開いた。
そうして、未だ寝ぼけるままゆっくりと目を開けば、
己の上に馬乗りになりニヤニヤと笑うポップに眉間の皺を益々深める。


「・・・・・中々に良い眺めだが、そう言うサービスは別の場所でヤって欲しいもんだ。」

「ンな事したら自分がとても大変になるのでいたしません。
って、まぁそんなのは良いや。師匠オハヨ。」


ワザとらしいまでに敬語で返すポップを特に気にした様子もなく、
欠伸を噛締めながらマトリフは起き上がり、
腹から膝へと移動したポップに軽く口付け、おうと返事を返す。
そして再び込み上げた欠伸を今度は噛締める事をせず盛大に漏らせば、
ポップはその様子にただ笑う。


「なーんか良く寝てたよなぁ。
やっぱ歳なんじゃね?」

「年寄りだって言うなら労わって昼寝ぐらいさせろ。
と言うか年寄り扱いするなら退け。重い。」


軽く揶揄する様に紡がれたその言葉に、
マトリフが再び嫌そうに眉を顰めて見せても、
退く気は更々ないのか、ポップは膝の上でまぁまぁと小さく片手を動かし、
マトリフを見上げる。
その一見すれば可愛らしいと言えなくもない仕草に、
益々眉間の皺を深めマトリフは溜息を落とした。

ポップがこう言った仕草をする時は。
面倒な事が起きた時か、
何かを強請る事が多い。

今度は一体何があったのか。
それとも何をさせようと言うのか。

そう言えば今日は随分と朝早くから
パプニカに行っていた筈。
まさかまた悪友のレオナから何か面倒事でも押し付けられたと言うのか。

そんな風に考えればもう一度溜息を零し、
最早退かす事は諦めたのか膝に座ったままのポップに向き直る。


「んで、今度は何の厄介事を押し付けられたんだ?」


一人出来る事ならば一人でやれよ?
そう付け加える事を忘れずに紡がれたその言葉に、
ポップは苦く笑って、あ〜…と言葉を濁してみせる。


「それはもう終わったから問題なし。」

「ほお?
それにしちゃ随分早い御帰還じゃねぇか。」


随分と楽なものだったのか?と問えば、
まぁとやはり曖昧に答える姿に何か無茶をしたのかと推測するも、
見た所怪我もなく無事に戻った以上、
まぁいいかとマトリフは肩を竦めて先を促す。


「なら何がして欲しいんだ?」


面倒事を押し付けられたのでなければ、
何か強請る事でもあるのだろう。
当たり前の様にそう言葉を続けるマトリフに、
ポップはただ苦く笑う。


「俺って信用なくね?」

「普段の行いの所為だからな。自業自得だろうが。」


違うか?と皮肉げな笑みを形作るマトリフに、
確かにとポップが苦笑を深めれば。
マトリフはそれで?と重ねて問いかけた。

口では何だかんだと文句を言いつつも、
それでも一応は聞いてくれるつもりらしい。
そう悟れば、先程までの苦い笑いも消え去り。
ポップは膝に座ったまま、彼を覗き込み。
ゆっくりと笑った。


「ねぇ、師匠。」



―――― 誕生日を祝わせて貰えませんか? ――――


本当は、びっくりさせたかったのだけれど。
内緒で用意する事も考えたのだけれど。
でも特別な日だから。
二人で一緒に祝いたいんです。


殊更ゆっくりとそう紡ぎ。
そうして駄目かな?と伺う様に此方へと視線向けるポップに。
マトリフはともすればニヤけそうになる口元を手で覆い、
ツイと視線逸らして歎息した。


自分ですら忘れて久しい生まれた日なんぞ、
一体どうやって調べてきたのか。

そう問うてみたい気もするが、
折角の弟子兼恋人の。
なんとも可愛らしい願いにまず答えなければ。
それこそ男が廃ると言うもの。


口元を覆っていた手をポップの頬に添え。
マトリフは珍しく眉間の皺を解き。
彼にしか見る事のない笑みを浮かべ。
喜んで。と呟き口付けた。




師匠と弟子。
それだけの関係じゃなくなった、最初の年の。
俺の生まれた日に。

初めて師匠から贈られた、
誕生日プレゼントはシンプルな銀のブレスレットは俺の腕に。


そうして。

同じ年の。
師匠の生まれた日から。


シンプルな銀のブレスレットは。



師匠と俺の腕の中に――――





END



涼崎様からの素敵リクエストは「マトポプでハッピーなお誕生日」でございました。

えぇとですね。
何でしょう…叫んでイイデスカ?

あまいんじゃバカッポーどもめっっっっ!!!!

ともあれ、何とかハッピーなお誕生日にはなったんじゃないだろうかとは思いますので、
一応リクエストには添えたのではないかと思ったり思わなかったり・・・・(汗)

涼崎様、大変遅くなった上にこのような駄文で大変申し訳ありませんっ!!
宜しければお持ち帰りくださいませ。
返品もやり直しも可でゴザイマスのでっ!!

素敵なリクエストありがとうございましたっ(礼)

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