―――だっ!
地を蹴りダイが走り出す。
それに応えるかのようにアバンは後ろへ下がった。
ダイは間合いを一気に詰めながら、己の剣を握りなおし
空いた手で闘気を繰り出す!

「――龍闘気!」

ぎんっ!

アバンの剣はかろうじて、その一撃を受け止める。
受けられたと見るやダイは手の剣を翻し、
1本の閃光を走らせた。

「――くっ!」

何とか一本を受け止め、追撃を避ける為 後ろに飛び退くアバンの腿に、
浅い切れ目が生まれた。
速い。
常人ならば、間違い無く最初の一撃で決まっていた。
うっすらと痛む腿にアバンは舌打ちし、
そうして改めて、その閃光の連打に驚く。
しかし。
驚いていたのは、アバンだけではなかった。
ダイもまた、自分の連撃を受け止め、
捌くとは 思わなかったのだ。
強い。
そう思ったのは、どちらであったか、両方なのか。
銀の剣と剣が、閃き、翻り、踊るように火花を散らす。
だが、経験の差か。
じりじりと圧されているのはダイの方だった。

「・・・さすがアバン先生・・・」

荒く息を尽きながら、ダイはこそりと呟く。

「いえいえ。ダイ君こそ流石ですよ・・・」

私ももう歳ですかねぇなどと笑みを浮かべるアバンの心情に嘘はない。
事実、力では圧倒的にダイの方が上回るのだ。
今は経験の差か、ほんの少し自分の方が有利なものの、
あと数年もすれば勝つのは難しくなるだろう。
否、これが試合でなく戦いであったのなら。
おそらく自分では勝てまい。
それでも。
勝たなければならないのだ。
たった一つの欲しいものの為に。

「これで終わりにしよう。先生。」
「えぇ、最後の一撃です。」

荒い息を整え、二人は再び構える。
負けたくない。
たった一つのものの為に。

「いくぞ!!!」
「来い!!」

この一撃に賭ける。
互いを睨み、今まさにお互いが最強の技を繰り出そうと走り出した時。

「マヒャド!!!」


背後から突然攻撃呪文が掛かり、ダイとアバンは後ろに飛ぶ。
丁度二人の真ん中に出来た冷気の塊を見やり、彼らは視線を向けた。
即ち、呪文を放った術者へと。

「マトリフ!」
「マトリフさん!!」

未だ緊張を解かぬまま、その名を呼べば。
マトリフはギンっと2人を睨み付け静かに問うた。

「・・・・ここで何してやがる。」

返答によっては容赦しないと静かに言い放つマトリフに、
彼らはふっと肩の力を抜く。
その様子にマトリフもまた緊張を緩めた。

突然の振動と強い力のぶつかり合いに、
眉を顰め様子を見に来れば。
自分達の住処からさして離れていない砂浜で、あろう事か2人の勇者が戦っていたのだ。
それは試合などと呼べる程生易しいものではなく。
真剣な命を賭けた戦いだと、直ぐに分かった。
マトリフとて、理由までは分からなくとも、
そんな男の矜持を賭けた戦いを簡単に止めようとは思わない。
だが、このままではどちらかが命を落としかねない。
そうなれば、自分の大切な弟子がどれだけ悲しむだろう。
それだけはマトリフにとって回避したい事だった。
ゆえに。
無粋と言われる覚悟でマトリフは2人の戦いを止めたのだ。


「・・・何がしたいのかはしらねぇ。
だが、あいつが泣く様な真似はやめて貰おうか。」


毅然とした態度を崩さずマトリフがそう言い放てば、
わなわなとダイの肩が震える。

「何で今マトリフさんが出てくるんだよ・・・」

怒りかそれとも別の何かか。
声を荒げ、ダイはマトリフを見据える。


「ラスボスは最後に登場するもんだろぉぉぉ!!!!」
「・・・・・」
「ちょ、ダイ君!」

慌てて静止に掛かるアバンの言葉を振りきりダイはなおも食い下がる。

「俺とアバン先生が勝負して勝った方がマトリフさんと戦うって約束だったのに!!」
「ダイ君、それ本人の前で言っちゃダメですって!」
「・・・・一応聞くが・・・・理由は何だ?」

何だか凄く下らない理由の様な気がしたものの、
そこに自分が絡んでいる以上は聞かねばならないと、
米神を押さえつつマトリフは聞く。

「そんなの決まってるじゃないか。
マトリフさんと倒せばポップは俺のになるだろ?」
「・・・・・・・・ほぉ。」
「そりゃ、ポップだって最初は泣くかもしれないけど、
そこはそれ、上手く慰めて宥めていつかこっちを向いてもらうんだ!
だから、まずどっちがその役と勝ちとるか勝負してたのに!
ね?!アバン先生?!」
「え・・・えぇ・・・・まぁ・・・・」

長い付き合いと言うのは、色々雰囲気で分かるものである。
それこそ良い意味でも悪い意味でも。
短く返事をした意外、一切言葉を発しないマトリフの姿に、
アバンはただ冷汗を流す。

「簡単に言うと、俺を倒してあいつを自分のものにするのは
どっちかを決めてたって事か。」
「そうだよ。」
「そうか・・・・・」

ふふふふふと地鳴りの様な笑い声が響く。

「・・・言いたい事が三つある。
まず一つ。あいつはものじゃねぇ。」

ゆらりと両腕を構えた瞬間アバンがびくりと体を振るわせる。
そして本能が告げているのだろう。
ダイもまた、身構えた。

「もう一つ。俺を選んだのはあいつの意思だ。」

両腕に己が持てる魔力を最大限まで込め、
マトリフはくつくつと笑った。

「マ、マトリフ落ち着いて!!」

冷静にとのアバンの声に、マトリフは笑みを張り付かせたまま答えた。

「俺は至って冷静だぜぇ?
あぁ、これが最後の一つだ。」

左右に込めた相反する魔力の塊を一纏めにし。
マトリフは慌てた様子の2人に言い放った。


「死ね。」


















何もなくなった元砂浜を見渡し、
マトリフはやれやれと、息を付いた。

「・・・どうせ死んでねぇんだろうなぁ。」


極大呪文を放った瞬間、逃げる様に飛び出した光をマトリフは見逃さなかった。
しぶとい彼らの事だ。
またあの手この手を考えて現れるのだろう。

全く持って迷惑だと一人呟きながら、
マトリフは歩き出した。


最愛の弟子が待つ場所へと。




END

4444hitのリクは梓様から『師匠と先生とダイでポップを巡って壮絶なバトル。』でした。


・・・・・バトルの意味を激しく間違えたかなと思ったのは私だけでしょうか?

いえね、最初はもうちょっと違う話のはずだったんですよ?!
もうちょっとシリアスだったんです!!!

あれぇ?何処で間違えたのかな・・・・(T-T)

何だか凄くリクの意味を履き違えたものになってしまいましたが、
梓様に捧げさせていただきます。

梓様、こんなんで宜しければ貰ってください!!
梓様のみお持ち帰り可ですが、


返品も可ですので!!!!!



リクエストありがとうございました!(礼)


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