それは荘厳で神聖で、
そして、驚きだった。



凄い。
その一言に尽きるとレオナはほぅっと感嘆の溜息を洩らした。
それは自分だけ出なく周囲も同じ様で。
目の前に起こるそれにただ目を奪われていた。


数日前にカールより送られてきた文献。
それには古代に滅んだと言われる精霊の力を借りる魔法が載っていた。
今やそれの使い手は何処にもなく、
記載されているそれが本当なのかも怪しい。
出来る事ならば、それが本物であるかどうか。
また、それは現代に蘇らせるのに相応しい物であるか。
それを世界で随一と謳われる大魔道士達に確かめて貰えないだろうか。
カールを治める女王のそんな言葉と共に。


それを読んだ時、レオナを始め国の関係者は皆内心喜んだ。
今や過大評価ではなく真実世界随一と誉れ高いあの師弟は、
国事だけではなく、表の舞台に立つ事を極端に嫌っているのだから。
宮廷魔道士として。
参謀として。
どれだけ此方が熱心に誘っても頑としてそれに乗る事のない彼らは、
真の実力すら計り知れなくて。
国の重鎮達の前だけではなく、今や仲間にも計り知れない魔法の力を見る絶好の機会だと
一にも二にもなくレオナはそれに飛びついた。


始めは渋い顔をしていた彼らも滅びた魔法を蘇らせるのだと聞いて、
何とか重い腰を上げてくれた。
最も説得には相当の時間と人員を要したのだが。
レオナや三賢者。そしてヒュンケルやマァム。
次々に訪れる仲間の説得にそれはやっと現実となり、
そうして、今目の前で起こるそれを見る事が出来たのだ。



「・・・・凄いわ・・・」
そうぽつりと声を洩らしたのはマァムだった。
真横から入ったその言葉にレオナは頷きつつも視線を逸らす事が出来ない。
その圧倒的な魔法力と具現化した精霊の美しさに。
魔法を一度でも習った事のある人間なら、その力の凄さに驚きを隠せないのも無理はないだろう。
事実、誰しもその湧き上がる魔法力に目を奪われていたのだから。
魔力を必要としないヒュンケルでさえも、それには目を奪われていた。
それほどに、それらは美しく、恐ろしいのだ。



焔を纏い荒々しいまでの熱量を携え、ポップの前に浮び上がる精霊。
その見るだけで竦んでしまいそうな精霊の力を借りているのか、ポップの姿もまた
紅く揺らめいている。
優美とすら思える動きで、ポップの持つ杖が掲げられマトリフへと標的を定める。

『・・・・・・・・・・・』

耳で聞く事の出来ないその呪文は、古代の呪文かそれとも精霊の言葉か。
ポップがそれを発した時、
焔の精霊が形を変え一条の矢となりマトリフを襲う。
紅蓮の業火が全てを覆いつくそうと猛威を振るうその瞬間。
マトリフもまた力ある言葉を発する。

『・・・・』

ドォンと響く爆音と何かが解けたのか辺りに水蒸気が巻き上げる。
一遍も見逃すまいと霧に目を凝らし、そこを見れば。
護る様に覆われた氷結の中心でマトリフが不適に笑う。

「・・・相変わらず焔の力のが強いんだなぁ。おめぇは。」

麗美とも言える蒼く絶対的な冷たさを発するその精霊の力の中心に立ち、
マトリフは口角を上げる。

「・・・師匠こそその冷たさは天下一品だね。性格にも出てんじゃねぇの?」

弟子にも情け容赦ないもんなと軽く笑い、ポップが焔の精霊をその手に戻せば。
馬鹿ぬかせとマトリフも小さく笑い氷の精霊を身に纏う。

「まぁいっちょケリ付けますか。」
「ふん。まだまだヒヨコには負けねぇさ。」

ざっと飛び退きポップは杖を天高く掲げ声を張る。

『天空の覇者絶対の王者、全知の精霊!
我が呼び掛けに答えその破壊力を示さん!!』

ドンと天から一筋の雷光が掲げた杖に宿る。
バチバチと音を上げるそれはそのまま強い光を杖に灯し発光する。
マトリフはそれに確認すると舌打ちし、後方に下がり唱えていた術を発動させる。

「スカラ。ピリオム。」

肉体を強化するその術が発動するや否や
ポップを視界から外す事無くマトリフは駆出す。

「ヒャド!!」

右手に込めた冷気を放ち、間合いを詰める。

「ギラ!」

雷の力を込めた杖を左手に持ち変えポップは右手で閃熱を走らせそれを相殺。
そのまま繰り出されたマトリフの杓杖を自分の杖で受け止めた。

「・・ッ!受けるのも上達したじゃねぇか・・・っ!」
「・・・お蔭さんで・・・師匠が厳しいもんでねっ!!!」

そのまま攻撃を払い飛ばそうとするポップの杖を往なし、
マトリフは術と唱え上空に飛び上がる。

「トベルーラ!」

小さく聞こえるポップの舌打ちを流し、力ある言葉を紡ぐ。

『大地の母豊穣と破壊の女神、死と再生の精霊!』
「メラゾーマ!!」

詠唱の中断を狙う為に放った焔の鳥が魔力の障壁に阻まれ敢無く散る。
詠唱中に起こるその障壁は同等かそれ以上の魔力を放たない限り解かれる事はない。
一足遅かったかと唇を噛むポップに皮肉な笑みをマトリフが浮かべる。

『永久の眠りから覚め我が呼び声に答えよ!』

爆音と地響き。
大地を割り地中から湧き上がるそれはマトリフを覆い尽くす。
一瞬の膨大な光、それはすぐ収束しマトリフの持つ杓杖に集まる。

「バイキルト!」

グンと湧き上がる攻撃力を確認し、ポップは杖を握り締め更に別の術を発動。

「トベルーラ!」

同じ視点になった互いを見詰め二人はどちらともなく不敵な笑みを浮かべる。
精霊を召喚し力を扱うそれは魔法力の消費が激しい。
最早これがお互い最後の一撃だと確信し見詰めあい、睨み合う。
お互いの動きを探りあい、じりじりと間合いを見出す。

そして。
夥しい程の閃光と爆音が周囲を包んだ--------------








「・・・・・・ありえないわ・・・・・」

ぼそりとレオナは呟いた。
未だ興奮冷めやらぬ様子で溜息を付けば。
全くだといつの間にか握り締めた手をゆるゆると解きながらマァムが頷いた。

「・・・本当に凄い・・・」

それを見た者全てに通じる意見なのだろう。
誰しもそれに反論する事はなく、むしろ興奮さめやらぬまま口々に感嘆の言葉を告げていた。

「一体どれだけ強くなれば気が済むのよ・・・」
「・・・最早俺の剣術でも敵わんかも知れんな。」
「て言うか、何時の間に体術まで覚えてるのよ。」

凄いの一言に尽きるわ。と呟くレオナにヒュンケルとマァムも同意する。
焔と雷の精霊を操ったポップも。
氷と大地の精霊を操ったマトリフも。
一体どれだけの魔法力を秘めているのか。
容易く扱って見せた二人に感嘆の意を見せながらレオナははぁと溜息を洩らした。

頑なに城仕えを拒む理由が分かったような気がして。
これだけの力があると言う事は。
それだけ破壊力があると言う証。
それは何処に仕えても、
例えその意思がなくとも、
脅威にしかなりえない。

あの2人はそれを知っているからこそ拒み続けるのだ。


これを見た全ての者に口止めを。
そしてカールには解読不可能だったと伝えよう。
それがきっとあの2人の為でもあるのだ。

心根の優しい大魔道士2人と見詰めレオナは小さく笑った。


END

6000hitはゆま様から『マトリフvsポップの魔法対決』でございます。
あぁぁぁぁぁ・・・・長い!!
そして切りが悪い!!!

毎回毎回ですが、本当にリクの意味も理解してない馬鹿ですいません!
魔法対決如何でしたでしょうか・・・・?
バトルシーンは本当に難くて;;
しかもショボいので満足して頂けたか不安でございます・・・・(T-T)

ゆま様如何でしたでしょう?
お気に召して頂けたら幸いでございます!
ゆま様のみお持ち帰りも返品も可ですので!!

難しかったけれど書いてて姫宮は凄く楽しかったですw
書き応えのあるリクエストありがとうございました!!!










ちょっとだけおまけ考え付いたので・・・・・w
って言っても面白くもないんですが;;
それでもいいさと言う心優しい人だけどうぞw










「いやぁ、姫さんあれはダメだわ。魔力がすぐなくなっちまう。」
「そうなの?どれくらいでかしら?」
「ん〜〜説明し難いんだけど、精霊を召喚してる間は常に魔法力を出し続けてるって感じ?」
「ごめん、わかんないわ。
んと、メドローア・・・は、あたし使えないから。
そうね、精霊1回召喚するのにメラゾーマだと何発分くらい?」
「・・・・そうだな・・・・桁にもよるけど・・・」
「あくまで一般的なメラゾーマで換算してよ?」
「ん〜。まぁ20発くらい?それで呼べるんじゃねぇ?」
「・・・・・・ごめん、聞いたあたしが馬鹿だったわ・・・・・・」




はい!面白くもなく落ちもない!!

いや、それだけあの師弟は魔法力が桁違いなんだと書きたかっただけです・・・
えぇ、それだけです。


ごめんなさい!!!(走り逃げ)


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