例え覚悟が出来ていたとしても、
起こりうる事を予測しても、
その衝撃は大きかった。
分かっていた筈だったのに。
そう小さく呟いてポップは目の前の現実に唇を噛んだ。
「やっぱり出てくるんだな、ダイ。」
死神のオワリ
杖を構えポップはそれを見据えた。
分かっていた。
覚悟など出来ていた。
神に逆らう事は、
即ち大逆。
天界で戦いの時に備え封印されていた竜の騎士が出てこない筈が無い。
「・・・・・・ダイ。」
ようやく逢えたなと小さくポップは呟く。
長い時間が掛かったと、自分より背の高くなった親友を見ながら。
けれどその構えが解かれる事はなかった。
そしてダイが言葉を発する事も。
何も映さない空虚な眼。
感情すら表さないその姿に、ポップはやはりと歯軋りをする。
そこまでする権利があるというのか。
神ならばそこまでして良いと言うのか。
封印するだけでは飽き足らず。
手足となる様に感情までもなくす事が、
神のする事だと言うのか。
すらりと剣を抜き構えるその姿にポップは小さく舌打ちし、
数歩後ろへ下がった。
大切な友をこんな姿にした神への憎しみと憎悪を必死で御しながら
ただ冷静になる事を努める。
今は彼を取り戻す事が先決なのだと。
だがそんなポップを嘲笑うかの様にダイは抑揚無く言葉を発する。
「・・・・・侵入者よ。去れ。
神は寛大だ。大人しく去ればそれを咎める事は無いだろう。」
「それは・・・・お前の言葉じゃないだろう・・・・・?
それを言わせてるのは誰だ?
お前は誰だ?
ダイ。お前は自分すら忘れたのか?
・・・・俺を忘れたのか?!」
眩暈を押さえポップは以前剣を構えたままのダイを見つめる。
言葉だけで正気に戻る筈がないと分かっていても、
言葉にせずには居られなかったのだ。
けれど、そんなポップの思いに返って来たのは、
嘲笑と一陣の光だった。
それが剣撃であると悟るより早く体は反応し横に飛び退く。
がらがらと音を立て崩れ去る壁はその一撃は威力を物語っていた。
対峙して分かるその力。
この力こそが大魔王を倒し、
神が欲しがった力。
あの時よりも遥かに威力の増したそれにポップは戦慄く。
避けたとは言え余波で受けた幾許かの傷に顔を顰め立ち上れば、
すっと真横から手が伸びる。
その手の持ち主はポップを支え立ち上らせると揶揄する様に笑った。
「・・・・覚悟出来てたんじゃナイノ?」
「出来てたさ。ただそれが甘かっただけだ。」
自分の甘さを素直に認め、回復呪文を掛けながらそう呟けば、
キルはその手を離し隣に並んだ。
何故居るのかとポップが訝しげな視線を向ける。
もう天界の門は開いた。
お前はお前のやる事があるだろうと、そう訴える様な視線に
キルは忘れてるみたいだけどねと口を開く。
視線は竜の騎士に向けたままで。
「契約を覚えてるカイ?」
「・・・・あぁ。」
「君が天界の門を開く変わりに、ボクは君の親友を取り戻すまで君を守る。
それが契約だっただろう?」
ボクは約束は守る主義だからネ。
そう薄く笑うキルから視線を外し、ポップは静かに呟いた。
「・・・・サンキュ。」
「契約ですカラ。」
お気になさらずにと軽口を叩くキルに苦笑を返しポップは思考を巡らせる。
この戦いはあくまでダイを取り戻す事が前提。
倒す事ではない。
極力傷付けず記憶を取り戻さねばならない。
つっと汗が額を流れる。
神の施した術を破る術はあるのか。
かつてダイが記憶を失った時、
あの時は自己犠牲呪文で運良く記憶が戻った。
けれど同じ事が通じるとは思えない。
幾度と無く浮かんでは消える案にポップは舌打ちをする。
事態は自分が思う以上に深刻なのだと思い知らされて。
どうするのか決まったカイ?と問う声にポップは小さく頷いた。
その案は酷く危険であるのだけれど、
ダイを取り戻すにはそれしかなかった。
「ダイの動きを止めてくれ。
出来るだけ傷付けずに。」
出来るか?と聞けばキルは当然と笑って見せる。
そんな彼に防御呪文を施しポップは真っ直ぐにダイを見据えた。
絶対に取り戻して見せる。
そんな覚悟を秘めた眼で。
「必ず、取り戻すからな。」
な、長いんで分割いたします〜〜;;
でもちゃんとダイは出ました!!!
例え記憶が無くても!
セリフ少なくても!
ダイはダイだよね?ね?ね?
・・・・・・・・・・・・・すいません;早く記憶戻したいデス(土下座)
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