「・・・・・・アンタは俺の大事な奴を傷付けた。」

眼には怒りを灯したまま静かにそう呟いてポップは神を見据えた。

許せない。

ダイを兵器と見なし
記憶を奪い戦わせた。
そしてキルを傷付けた。
全て己の利己の為だけに。

許さない。
例えそれが誰でもーーーーーーーーーーー。



死神のオワリ ACT.4







対峙する神と人。
気迫のみが支配するその静寂な時を打ち破ったのは、
神の哄笑だった。
さも可笑しくて堪らないと笑うその顔に浮かぶのは嘲り。
ただの人間如きがどれだけ大仰な事を口にするかと笑い、
神は漸く言葉を紡いだ。

「ただの人間が大きく出たものだ。
なるほど確かに人としては桁外れな魔力を内包している様だが、
その程度の力で私に何か出来ると思ってはおるまい?」

諦めるなら今の内だ。今なら命までは奪わない。
そう哀れみすら浮かべ紡いだ神の言葉に、
ポップは静かに口を開く。

「・・・・・・命を奪わないんじゃない、奪えないんだろ?」
「・・・なに?」

抑揚なく言い放った言葉に始めて神の頬が小さく引き攣る。
だが、それに構わすポップは神から視線を逸らさぬまま薄く笑った。

「アンタが俺を殺す事は出来ない。
いいや、俺だけじゃない。アンタには人を殺す事は出来ないんだ。」


ずっと疑問に思っていた。
まだ神を味方だと信じていた時から。

魔族には魔の神が
竜族には竜の神が
それぞれ魔界に存在すると言うのに。
何故人の神は地上に居ないのか。

何故、人だけは己の神に会う事すら出来ないのか。

人は傲慢な癖に臆病で。
すぐ強いものに縋るから。
願えば叶うと分かれば己で解決する事はしなくなる。
だからこそ神は人の前に現れないのだと思っていた。
最初は。

だが、天界の門を探すうちに感じたのは微かな違和感。
魔界に属するものを捕えて。
魔族を隷属させてまで。
何故、人を隔絶するのか。
何故、竜の騎士を手駒に欲しがったか。

考えれば考えるだけ湧く違和感と不信感。
そうして考え付いた一つの予想。
それは神に対峙しほぼ確信へと変った。


怒気を含み一層強くなった威圧感を受け止め、
ポップは神を見据えたまま呟く。


「アンタは神じゃない。」





しんと静まり返った空間。
何故だとそう戦慄く神の姿に先程までの絶対的な余裕はなく。
その姿に確信を覚えながらポップは更に言葉を続ける。


「アンタだけじゃない。
ヴェルザーも魔族の神と言われてる奴もだ。
アンタ達は神なんかじゃない。」
「・・・・・・・何故・・・・・そう思う・・・・・」
「アンタは俺には手を出さなかった。
普通なら一番弱い俺から殺すのが一番早いはずだろ?
全滅させるならさ。
でもアンタは俺に手出しはしなかった。
それどころかアンタに操られてるダイですら俺に帰れと警告してきた。
なんでだ?
此処に誰も来て欲しくないなら、皆殺しにするのが一番楽じゃねぇか。
ダイを操って、支配するアンタみたいな奴が慈悲でそんな事言うとは思えねぇ。
・・・・・これは想像なんだけどよ・・・・」
「だ、黙れ・・・」

ゆっくりと構えを解き、数歩神に近づけば、
同じ分だけ神は背後に体を動かす。
最早威厳すら消え失せたその姿は小物にも見えて、
かつて神を信じた自分が酷く馬鹿らしいと己を嘲笑し。
ポップは冷酷な笑みを湛えその言葉を紡いだ。


「アンタ。人を殺せない様に創造されたんだろ?」
「黙れぇぇぇぇぇ!!!」



刹那、爆雷がポップを襲う。
けれど、それは予め背後に携えた焔の鳳によって容易く弾かれた。

「・・・・ホラ、な。
全然大した威力じゃねぇ。
俺如き・・・人間如きの魔法で弾かれるんだからよ。」
「・・・おのれ・・・おのれぇぇぇ!!」

雷が、炎熱が己に向う中ポップは平然と歩みを進める。
魔法によって崩された瓦礫は纏う焔に瞬時にかき消され、
只の一つも傷を負う事はない。
理解さえすれば、其処にもはや敵わないものはなかった。

「不滅の魂を持ってても、
例えそれが不死の体でも、
アンタには人を殺せない。
それが。アンタが天界を孤立させた理由だろ?」
「おのれ・・・・人間如きが・・・・・」
「ダイを、竜の騎士を手元に置いたのは何でだ?
アンタに命を創造する力がないからだろう?
もう一度だけ言う。
アンタは神なんかじゃない。
・・・・そうだろ?キル。」

ちらりと視線を神の背後に移しそう疑問符を投げかければ、
自ら治癒を施し回復した死神が笑う。
酷く愉快そうに。
可笑しくて堪らないといった様に。

「そうだヨ。神なんかじゃない。
神によって造られたそれぞれの種族の守護者。
それがボク達だ。」

まぁ尤もボクはその一部だけどと揶揄する様に笑うキルにポップは少しだけ笑みを返し
すっと眼を細め神、いや人の守護者を見据えた。

「・・・・・お前に・・・何が分かる・・・・・・」

ぎりりと歯噛みし、神、いや人の守護者は呻く。
忌々し気にポップを睨み、強く拳を握り締めた。

「お前になど何が分かる!
神に造られ、永劫の長き時を一人存在し人如きを守護せねばならぬ気持ちなど
お前に分かるものか!!」

込めた魔力を解き放ち人の守護者は吼える。
けれどそれは当たる事なくキルの鎌によって軌道を変え虚しく居城を削ぐばかり。
湧きあがる埃すら意ともせずポップは侮蔑の色を浮かべる。

「わかんねぇよ。そんな事は。
興味もねぇ。
けどな、俺は守護する筈の者を如きと呼ぶ奴に同情する気もねぇ。」
「・・・・永遠の孤独を不死と言う鎖で縛られた私の気持ちをお前は知るまい。
長き時の中、神を憎んで何が悪い!
お前になど分かるものか!!!!」


ザッと背後に飛退き、人の守護者は剣を構えた。
そこに魔力が集束し、剣は紅く染まっていく。
それに怯む事なくポップもまた呪と紡ぎ、怒りに血走ったその両の眼を怯む事なく見返す。

「・・・・詭弁だな。」
「何だと!?」
「詭弁だって言ったんだ。
前にバーンが言ってたよ。
神は力弱い人に地上を渡し、他の種族を魔界に追いやったって。
・・・アンタの仕業だろ?
アンタと他の守護者の間に何があったのか知らねぇ。
だけど想像なら出来る。
アンタは地上に人だけを置いて唯一の神と言われたかったんだ。」


己の守護する者だけを地上に残し、
神と崇められ、君臨する為に。
そして、それを確固たるものにする為に竜の騎士と言う手駒が欲しかった。

そうだろうと呟き、ポップは完成した呪文を開放する。
二対の焔の鳳がポップの背で咆哮を上げる。
焔を纏い荒々しいまでの熱量を携え、ポップは静かに杖を掲げた。

「それを、永遠の孤独だ?
神を憎むだ?
・・・・てめぇの支配欲に大層な理由付けてんじゃねぇよ。」











今回はさくっと早めに更新できましたw
が、
いやぁ・・・・・偽造も捏造も此処まで来ると凄いよなと自分でも思う今日この頃。

しかも今回全然キル様活躍してないしぃ;

でも格好いい(?)ポップ君がいっぱい書けたので書き手は大満足w


拍手ありがとうございました!


余談ですがうちの死神シリーズ神様の扱い酷いですよね;
そろそろ神様にいい加減にしろやと刺されそうです((;;゚□゚))ガタガタ

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