誰かが犠牲になんてもう嫌だった。
そんな事はあの時だけで充分だ。
待つのも、待たせるのも。
置いて行くのも、置いていかれるのも。
犠牲を嘆く勝利などもういらない。
欲しいのは只一つ。
誰もが生き残る勝利。
死神のオワリ ACT.6
こそりと呟いたポップの言葉にキルは僅かに目を見開いた。
確かにその方法ならば勝つ事が出来るかもしれないと。
リスクはある。
危険な賭けかもしれない。
だが、当初の予定であった己の考えた方法より確実なのは確かで。
キルは僅かに肩を竦め息を吐いた。
「・・・・まったく、とんでもない事を考え付くネ。」
流石に凄いと手放しに褒めたくはないケドと揶揄すれば。
ポップはほんの少しだけ戸惑った様に出来るか?と言葉を紡ぐ。
「まぁ、出来るだろうネ。
やりたくないってのも事実ダケド。」
その言葉にポップの眼が小さく戸惑いを見せる。
だが、彼は何も言葉を発しはしなかった。
己の出した提案は、誰一人失くす事はないけれど。
それなりのリスクを被る事になるのもまた事実。
だからこそ。
彼が是と言わない限り行えるものでもなく。
ポップにはただ待つ事しか出来ないのだから。
けれど、とポップは内心思う。
出来る事ならば、この作戦に乗って欲しいと思うのは事実。
そうでなければ、自分はまた大切なモノを失ってしまうと。
ヴェルザーは新たな器を得る事で魂だけの状態より蘇る。
けれど、何の命もないこの場でヴェルザーが復活すると言う事は、
それは元の守護者として復活すると言う事。
即ち、キルと言う人格の消滅。
失うのは嫌だ。
居なくなるのは嫌だ。
失う恐怖が体を駆け巡り、ポップはぎゅっと拳を握り締める。
そうしてただ戦いの中、彼の答えだけを待った。
ねぇ、と小さな声が聞えたのは、
攻撃を往なし、次いで来る魔法を反射した時の事。
何だと答えれば、
彼は普段より僅かに真面目な声で言葉を紡いだ。
「キミはダレも失いたくないんだネ?」
「あぁ。」
「ただ一人も?」
その言葉は酷く簡単で酷く重いモノだと知っていたけれど。
もう失う事だけはしたくなかったから。
ポップは頷き答えを返す。
「お前にでっかいリスクがあるのはわかってる。
やりたくないのもわかってる。
それでも。
それでも俺は誰も失いたくない。」
だからと言葉を続ける必要はなかった。
ポップの強い意志を秘めた言葉は、全てを物語っていて。
キルは薄く笑う。
揶揄するでもなく、ただ笑った。
「ソレがキミの望みなら。
ボクが拒否する事はデキナイさ。」
「・・・・・キル。」
ポップの揺れる眼は歓喜を灯し、それを確認した死神は満足そうに笑みを浮かべ
デモネ、と呟く。
「ヴェルザー様のお叱りは半分任せたからネ。」
「・・・・うわ・・・ヤだな、それ。」
心底嫌そうに眉根を寄せた時、すでにキルの気配はそこにはなかった。
言い逃げかよと僅かに愚痴を零しつつ。
それでもポップの口元には笑みが浮かんでいた。
もう、何も心配などないと。
竜の騎士を封じ込めた空間とはまた別の。
深遠の闇を通り抜け、キルは見知った気配を追う。
そこがどの場所かなど空間を操る自分には関係なかった。
例えそこに封があったとしてもそれは然り。
同じ空間、近しき場にさえあれば、
己を呼ぶのにどれだけの苦労があろうか。
『・・・ヴェルザー様。』
己であり、主であり、魂を別つ彼を呼べば。
竜の守護者たる彼がゆるりと動く気配を感じた。
もっとも動いたのは実際にではなく、魂の動きではあるが。
『・・・・人と言うのは時として面白い事を考え付くものだ。』
幾分か愉快そうな主の呟きに全くだとキルもまた苦笑を返す。
そうして宜しいですかと問えば、
ヴェルザーは尚も愉快そうに答えた。
『お前がそれで良いと思った事に何故我が否と答える。
忠実な部下であり、我でもあるお前の決めた事は
我が決めた事に尤も近しい。』
是と答えるヴェルザーに一つ頷き、キルは術を紡ぎ始める。
言葉は光となり淡い蒼に発光したそれはキルを纏い、
そうして空間の先へと道を造る。
やがて淡かった光が眩いばかりに周囲を照らし、
術が終わろうとする時。
幾許か感心を含んだ声が聞える。
『お前が気に入るのがわかるな。
我とお前が逆であったならば我とて同じ事をしたかもしれん。』
その言葉に少しだけ口角を上げ、
そうしてキルは開放され己に向い苦笑を浮かべた。
『それでも、その考えには否と答えますがネ。
アレを共有する気は全くないですカラ。』
魂の別った時から思考は共有すれど感情まで別物ですヨと頭を垂れるその姿に。
魂の主は笑い、己もまた笑う。
そして久方振りの対面は、僅かに先を見上げたヴェルザーの言葉によって終りを告げた。
『長い戦いも飽いた。
我らの思考した終末とは相違あるが其れもまた良し。』
『御意。』
終末までもう少し。
あぁ、やっっっっとヴェルザー様が出来てました!!
嬉しさの余り「うへへへっ」とか変な声を洩らしてる姫宮です(怖)
やっと、いや、本当にやっとなんですが終りが見えてきました!
・・・・・以外と長かったですよね。本気で。
書き始めた当初は10話完結予定でした。
はい、本来なら今回で完結してるはずなのにまだ終わりません(汗)
お、おかしいな・・・;;
でも、そろそろ終わりますのでもう少しだけお付き合いくだされば幸いですw
暖かいお言葉をいつも感謝しております。
ありがとうの言葉はどれだけ言っても言い切れませんw
そして、頑張ってとの嬉しいお言葉もですw
まだまだこれからも凹んだり、落ち込んだりするかもしれない弱い私ですが、
前を向いて好きな道を走りますので、
どうぞこれからも見守ってやって下さいませ。
拍手ありがとうございました!!
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