今度こそ。
描いた夢を現実に。
平和になった世界であいつが笑い。
その隣に勝ち気だが涙脆い彼女が居て。
周りには大切な仲間達が居る。
そんな幸せの縮図を見る事が出来るのなら。
それだけで、満足だ。
死神のオワリ ACT.7
「・・・・・・何をした・・・・・・」
わなわなと震える声でそう呟く姿に、ポップはただ何もと簡潔に答える。
死神がこの場より居なくなった事すら気付かなかった事は余裕のなさを知らしめていて。
今度こそ、とポップは一人苦笑を滲ませた。
その笑い顔に人の守護者である彼は言い様のない感情が湧きあがる。
得体の知れないそれは、酷く身を萎縮し。
守護するにも及ばぬ存在と、
そう見下し続けた人である彼に何故そんな感情を持つのかすら分からなかった。
「・・・・・お前は何故そこまで出来る?
何故、人が神と呼ぶ私に逆らう?
神に反逆した者と呼ばれ大罪人になる事すら厭わないのか?!」
それは説得と言うよりは既に訴えに近く。
ポップは大仰に吐息を吐いて、アンタはさと紡いだ。
「アンタはさ、一人だからわかんねぇんだ。
一人じゃない機会もあったのかもしれねぇ。
でも、アンタはソレを知ろうとしなかったんだ。」
だからわからねぇんだよと。僅かに憐憫の情すら見せるポップに。
人の守護者は苛立ったように声を荒げる。
謎掛けにも似た言葉は、ただ訳もなく不快感を誘うだけで、
それが重要なものであるなどと気付きもせずに。
「所詮人など弱く、理解を越えた物には迫害を加える弱き存在。
それであるお前が何故私に刃向かう?
何故竜の騎士如きを救おうと願う?!」
「あいつを如きと言うんじゃねぇ!!!」
「事実ではないか!
竜の騎士など所詮は神が作り出した兵器!
何故そんなものの為に影ある道を自ら進んで歩もうとするのだ!?」
理解で出来ぬと悲鳴の如く叫ぶそれに、ポップは静かに首を横に振る。
その表情までは見る事は叶わないが、発した声は酷く疲れてる様にも感じられた。
「アンタには絶対わからねぇよ。
仲間の意味なんて。
種族とか別に関係ねぇんだ。
ただ大切だから。
ただ守りたいから。
そんな気持ちがわかんねぇアンタには何を言っても無駄なんだ。」
だから、と言葉を続けはっきりと捕えたその視線は真っ直ぐで。
その目に光は強い意志と怒りが灯されていた。
「・・・説得する気もねぇ。
理解もいらねぇ。
アンタは自分を神から引きずり降ろした俺を憎んでりゃいい。」
それで本望だと、そう笑うポップの姿に戦慄を覚え、
何をと反論を試みたその時、びくりと人の守護者である彼の体が震えた。
体が、動かないのだ。
その自分の陥った境遇に焦りを覚え何をしたと。
僅かに上擦る声で問う。
「何を・・・・したのだ。人如きが・・・・・」
「動きをな、止めさせてもらった。
暗黒魔闘気って知ってるかい?
闘気で動きを止めるもんなんだけどよ。
それをちょこっと改良して魔力で動きを止めるんだ。
まぁ、俺のオリジナルだけどな。」
完全に身動きが取れない事を確認し、
そして近づく気配に満足気に頷き。
ポップは愕然とした表情で己を見る彼に囁いた。
「さようなら。神になりたかった者。」
その瞬間。
眩い閃光が全てを覆い隠した。
『久しいな。』
そう聞えた声に身を震わせ、そうして彼はやっと気が付いた。
先程人である奴から感じた得体の知れない感情。
幾年月感じ得なかったその感情をはっきり理解する事が出来たのは。
光に目を焼かれても感じる同胞の気配によってだった。
「ヴェ・・・・ヴェルザー・・・・・・」
震えの止まらぬ声で漸く呟いた声に、
嘲りとも嘲笑取れるその声は、
尚も愉快そうであり。
彼は恐怖した。
そう、先程からずっと感じていた感覚は恐怖であったのだと。
漸くその答えに結論づいた時。
最後の声が届いた。
『貰うぞ、その体。』
光量が収まり、隣に良く知った気配を感じて、
ポップは慣れた目で周囲を見渡すとふっと吐息を洩らす。
この場に居るのは変らぬ三人のまま。
けれど、敵である彼が発する気配は最早違うもので。
それは戦いが終わった事を意味していた。
ポップが立案したそれは至極簡単であり。
至極難しいものでもあった。
曰く。
ヴェルザーを開放し人の守護者の肉体を奪え。
誰も考えすら付かなかったその作戦は功を奏した。
そう。
眼の前の人の守護者は既に敵ではない。
戦いは、
ヴェルザーが新たな肉体を得る事で結末を迎えたのだ。
「アイツは?」
ぽつりとポップが疑問を投げれば、
新たに人の守護者となったヴェルザーは己の胸に手を当て、
此処にと答えを返す。
その答えに一つ頷き、安心した様に膝を付いた。
「あ〜〜〜〜、もう。
マジで疲れた・・・・・・」
二度とこんな面倒はゴメンだと。
吐き捨てるように呟き、視線を隣にやれば。
当然の様にそこに立つキルはクスクスと愉快そうに笑った。
「まぁ、お疲れサマ?」
「お前もな。」
それからと言葉を続け、ポップは真摯にヴェルザーを見つめる。
臆する事なく向けられたその眼にヴェルザーはなるほどと内心苦く笑った。
確かに、人にしては珍しく、興味深いと。
そうして興味深げに次の言葉を待てば。
彼は静かに口を開いた。
「・・・・ありがとうって言うべきなのかな。」
「さて、どうであろうな。
我が新たな人の守護者となる事が果たして人に取って良い事かも分からぬ。
ヤツの様に人如きよと見放すかも知れぬのだ。
・・・・・礼を言うには及ばぬかも知れぬぞ。」
直接人に仇名す事は出来ぬが、もう一人の己を、
即ち竜の守護者であるキルを使えばソレは可能な事やも知れぬ。
ほんの少しだけ揶揄を込めてそう紡がれたヴェルザーの言葉に。
ポップは肩を竦め悪戯に笑った。
「どうぞ、それはご自由に。」
俺には関係ないとそう言うポップの姿に僅かに眉根を寄せれば。
彼は愉快だと言わんばかりにその笑みを深める。
「俺はさぁ、大切なヤツを誰も失いたくないだけだったんだし。
そう言う意味では目的は果たしたし。
ついでに言うと、俺は別に地上なんかどうでもいいし?
ただ、俺の仲間は皆世界が好きだから戦うって言い出すかもなぁ。
そしたら俺は仲間が大切だから戦うしかない訳だけど。
それまでは関係ないしさ。」
出来れば面倒だから止めて欲しいが、やりたいならば好きにしろ。
ただし仲間が戦うのであれば、
自分もそれに習い戦いへ赴くだろうと。
何とも不敵な言葉に、キルは堪らずにクツクツと笑い出す。
「全くキミってば面白いヨネ!
普通神様に喧嘩売るかネ?」
「うっせぇ。神様じゃねぇだろうが!」
「で・も。人が神様だって信じてるのは事実だし?
むしろコレってトップシークレットなんだヨ?
他の人間なんかが知ってるわけないんだから、
世間から見たらキミってば神様に喧嘩売ってる事になるんじゃナイ?」
「あ〜もう!うるせぇな!
とにかく!!」
じゃれ合いとも取れる言い合いに区切りを付け、
ポップはヴェルザーに向き直り。
こほんと一つ咳払いをする。
「まぁ、とにかくさ。
地上をどうにかってのはアンタの意思だし。
俺には止める術もないし。
それはそん時考えるからいいんだよ。
ただ、今は俺の考えに乗ってくれた事に感謝してるんだから。」
だから、ありがとうと。
ほんの少し照れ臭そうに、そう呟くポップの姿にヴェルザーは目を細める。
たかが人と思っていたが、
是ほどの輝きを発する者が稀とは言えいるのなら。
なるほど、人も面白いものだと思いながら。
そうして、彼は呟いた。
「礼には及ばぬ」と。
ようやく、ようやく面倒なシーンが終わったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!(マテ)
「死神のオワリ」はこれで漸く最後ですw
死神シリーズも次でおしまいかなぁ。
(多分ですけどね。何と言っても予定より長くなるのが得意・・・ガフガフ)
でもまぁそろそろ本当に完結です。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
って言うには気が早いかな。
もうちょっとお付き合い下さいませ!!!ですね。
拍手ありがとうございました(礼)
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