会いたかったと告げた言葉に。
貴方は少し驚いて。
そして笑ってくれた。
女王の憂鬱 act.6
「俺も、会いたくなかった訳じゃないんだぜ?」
会いたかった。
そう言葉を紡ぐレオナに彼は肩を竦めクスクスと笑う。
レオナの目の前にはもう先程の従者の姿はなく。
白い法衣を身に纏い微笑む彼の姿だけ。
事情があったんだ。
ごめんな?
そう決まり悪そうに呟く声も。
頬を掻き困った様に笑う姿も。
全て覚えているから。
間違いなく彼だと確信できるから。
彼の胸に飛び込んで、
レオナは極上の笑みを綻ばせた。
「凄く、会いたかった!」
「ったく、嫁入り前の娘のやる事じゃねぇよな。」
勢い良く飛び込んだレオナをニ三歩よろけながらも受け止めれば。
ポップは何処か照れた様に、そして困った様に笑う。
まさしく今日結婚式だってによ?
そう苦笑する姿にレオナはだってと頬を膨らませ意地悪く睨み付ける真似を見せる。
「離したら直ぐに消えちゃいそうなんだもの。」
ポップ君が悪いんでしょう?
そう笑って告げれば確かにそうだけどと僅かに口篭り頬を掻くその姿に、
レオナは再び笑い出す。
「凄く会いたかったの。」
「俺もだよ。」
「謝りたい事も、お礼言いたい事も沢山あるの。」
「・・・・謝られる事も、礼を言われる事も俺には何一つないぜ?
今日は此処に懐かしい友達のお祝いに来ただけだしな。」
謝罪も礼も何一ついらないから、どうか笑ってくれよ。
案にそう告げている彼の言葉にレオナは少し驚いて、そしてあぁと嘆息した。
彼は、何処までも彼のままで。
それは当然なのだけれど、変わらない事が酷く嬉しかったから。
「・・・今何してるのとか・・・そう言う事は聞いてもいいの?」
僅かに悪戯に笑みを浮べて聞けば、少しだけ眦を下げて微笑む彼の姿が見えた。
予想通りのその姿にレオナは小さく吐息を零し、そして笑う。
「秘密って訳?まぁ・・・・・・仕方ないんだけど、ね。」
今の貴方は行方不明で、誰も居場所を知らないから。
それを明かす事はないだろうと、わかっていたから。
別段ショックを受けたりはしない。
あえて聞いたのは彼女なりの意趣返し。
お節介な死神だけが、彼の場所を知っているのが少しだけ悔しかっただけ。
「姫さん、ごめ・・・・」
「はい、すとーーっぷ!」
ごめん。そう言葉を紡ごうとしたポップの唇に手を押し当てて。
その言葉を見事に塞いで。
レオナはしてやったりと意地の悪い笑みを浮べる。
「私の『ごめん』も『ありがとう』も受け取ってくれないポップくんから、ゴメンって聞きたくないわ?
聞きたいのは一つだけだもの。」
私やダイくんが側に居ないのは少しだけシャクだけど。
私達が出来なかった事が少しだけ悔しいけれど。
本当は、いつでも会える所に居て欲しかったけれど。
でも、優しい貴方と今まで会えなかったのは、
きっとこれからもそう簡単に会えないって事だから。
だから聞くのは一つだけでいい。
「貴方は、今幸せ?」
その言葉に、彼は少しだけ驚いて、
そうして優しい微笑みを浮べて頷いた。
「あぁ、多分幸せだぜ。やりたい事も色々あるし。」
「側にお節介な死神がいるし?」
「・・・・・・・・・・・・それイヤミかい?」
眉間に皺を寄せて、少しだけ嫌そうにポップがそう口を開けば、
レオナは少しだけね?と答えて笑い出す。
そうして一頻り笑い終えれば、彼は呪文を唱える。
僅かに上がる煙の中、現れるのは従者姿の彼。
「そろそろ行こうか、花嫁さん。」
「そうね。そろそろ時間だものね。」
僅かに名残惜しげに溜息を吐けば、ポップは大袈裟に肩を竦めて見せる。
「このままだと花嫁が逃げたって大騒ぎになっちまう。
俺は嫌だぜぇ?姫さんと逃走するのは。」
ダイに恨まれるだろ?と苦笑して手を差し出せば、その手を取りながらレオナもまた苦笑零し、
そうして少しだけ不貞腐れて見せた。
「私にも選ぶ権利はあるの!ポップくんとは絶対結婚したくないもの。」
「へいへい、わかってますって。」
「ポップくんって私の中で旦那様ってイメージじゃないのよねぇ。」
「そいつは奇遇だね。俺の中でも姫さんは嫁って感じじゃねぇわ。」
当然だけど、と二人で笑いながら進めば扉はもう目の前。
そう彼は伴侶にはなり得ない。
とてもとても大切だけれど、
愛してると胸を張って言えるけれど。
恋愛ではないから。
離れていても、これから会う事がなくても。
彼は特別で、大切な・・・・・・
「…わかっちゃった。ポップくんのイメージ。」
まさに扉に手を掛けるその瞬間。
ポツンと呟いてポップを見れば、彼もまた思い当たったのかレオナを見詰め、
そうして姿が変わっても変わらないままの眼を細め、俺もだと小さく笑った。
離れていても、これから会う事がなくても。
彼は特別で、大切な・・・・・・
私の『家族』
開かれる扉からもれる光に目を細め、
晴れる気持ちを感じて、レオナは穏やかに微笑んだ。
END
えぇと、ご無沙汰しております;
本当に本当に久方ぶりの更新でございます;
拍手やBBSにすらご挨拶で出来ない不甲斐ない私にも拘らず、
皆様いつもありがたいお言葉をありがとうございます!!
見捨てずに応援頂け本当に感謝しております。
漸く再開出来そうです。
皆様に多大なる感謝を。
本当にありがとうございました!!!
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