静かに笑う顔が好き。
優しく髪に触れる手が好き。
穏やかに名前を呼ばれるのが好き。
どんな時でも俺に気付いてくれるのが好き。
One wish-some fronts-
ほら、まただ。
俺が瞑想中の部屋に入った瞬間、アンタは俺に気付く。
何も言わないけどわかるんだ。
ほんの少しだけ、魔力の柔らかい殻が動くから。
何で背中向けててもわかるのかね?
一流の剣士なら気配でわかるとか聞くけどさ。
あんた大魔道士でしょ?
まぁ、長く生きてるアンタだから。
昔剣士でしたとか言っても驚かないけど。
そうじゃないんだよな。
知ってるんだ。
この部屋の秘密。
俺以外が開けようと思っても、絶対開かないって。
瞑想中ってのは、魔法使いが一番無防備になる時。
当然だよな、魔力を高め叡智を高める事に集中するんだから。
その間が一番危険な状態。
剣士や武道家みたいに気配に敏感じゃないから、
瞑想中に後ろから狙われたら一発であの世行き。
だから普通瞑想する場所には、色んな仕掛けをしておく。
例えば、その部屋事態に結界を張るとか。
魔力で施錠するとか。
腕の立つ奴を護衛に置くとか。
方法は人それぞれだけど、
必ずするもの。
アンタが瞑想中の時は必ず魔力で施錠してるのも知ってる。
なのに。
俺がこの扉に阻まれた事は、
一度もない。
その度に。
自惚れたくなるんだ。
相変わらず俺に背中を向けたまま動かないアンタの首に、
後ろから両腕を回して抱きついて。
俺は目を閉じる。
「・・・・・なんだって言うんだ?」
用事もないのに瞑想の邪魔をするな。
そう言葉では言うけど、口調も気配も優しい。
絶対に俺を拒まないと再確認して。
俺はそのままの体勢で小さく笑った。
「ん〜・・・・何となくってやつ?」
「・・・ガキか、おめぇは。」
「まだ未成年で〜す。」
クスクスと俺が笑えば、
諦めたのかアンタは小さく溜息を零す。
「・・・重い。」
「うん。」
「・・・邪魔するな。」
「うん。」
返事とは裏腹に動かない俺に、
また溜息を零すのが聞こえる。
でも手は振り解かないアンタが俺の名前を呼ぶ。
「・・・・ポップ。」
「ん〜・・・?」
「何かあったのか?」
少しだけ気遣わしげなその声色に、
なにもと笑って眼を閉じれば。
全く動かない俺に、
アンタはその手を伸ばして俺の頭を叩く。
ポンポンと。
宥める様に軽く叩くその手が好き。
優しく髪に触れるのが好き。
名前を呼ばれるのが好き。
どんな時でも絶対に俺を拒まないでくれるのが好き。
何時までこうしていられる?
ふと湧く疑問に悪寒が走る。
認めたくない現実。
失ってしまうかもしれない恐怖。
怖くて、悲しくて。
押し潰されそうな不安を忘れる様に。
アンタの肩にかを埋めて眼を閉じた。
「もう少しこのままがいい・・・・・」
幸せな現実を亡くす覚悟が出来るまで。
側に居たいから。
END
久々のお師匠様ですw
以前書いたマトポプ「One wish」のちょっと前のお話。
失くしたくない。
でもそれを失くすのは確実で。
その言葉を告げる覚悟を下さい。
みたいな感じで(笑)
マトポプは何だかんだとポップが師匠にどっぷり依存してるのが好きです。
んで何だかんだとポップを溺愛してるお師匠もww
また微妙に暗いネタですいませんです:
いい加減暗いネタを拍手のお礼にするなよと突っ込みつつこの辺で。
拍手ありがとうございました!(礼)
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