何故?
驚きと、それ以上の悲しい眼で彼を見る。
嘘だよとそう告げるのを信じているかつての仲間達が。
死の大地に突如現われた巨大な城。
其処から集まり牙を剥く魔界の住人。
勇者ダイ不在の今、かつての仲間達はパプニカに集結し、
世界を守る為に今再び戦いを覚悟した。
そこに欠ける者など当然なく。
皆、最後まで戦い勝利すると。
誰しも、そう信じて疑わずにいた。
なのに。
まさか彼が。
勇者と最後まで戦いを共にした彼が。
「嘘よね・・・・・?」
そう紡いだのは誰なのか。
信じられなかった。
信じたくなかった。
誰しも冗談だと信じている。
否、信じようとしている中。
けれどポップの口元は笑みを形作るだけ。
愉快そうに。
何処か狂気を孕み。
ざわめき、訝しみ、そうして止まらぬ嘲笑に誰もが静まった時。
ポップは漸く笑いを止め周囲に眼を向けた。
「なるほど?
なるほど、なるほど。
俺はダイが不在の今でも死の大地で魔族相手と戦うと。
皆はそう信じちゃってた訳か。」
馬鹿馬鹿しい。
そう吐き捨てるかの如く紡いだ言葉に、誰もが言葉を失う。
シンとした室内。
驚愕に動く事すら忘れた仲間達。
その様子にすら満足げに微笑んで、
ポップはその願いを裏切った。
そう。
まさか彼が。
勇者と最後まで戦いを共にした彼が。
「もう一度だけ言うな?
何故俺が、部下と戦う必要があるんだ?」
世界を裏切るなんて。
shoot down God
嘘だ。
再び誰かがそう叫ぶ。
そうしてその胸に手を伸ばそうとした時。
雷鳴にも似た爆発がその部屋に向かい炸裂した。
吹き付ける豪風、背を打ち付けるのは壁か床か。
痛む身体を押さえ敵襲かと皆が身構える中、
ポップただ一人は狂気の笑みを湛えたままそこに立つ。
現われた魔族の姿に怯む事もないままに。
「・・・・・・・・・・・お迎えには、少し早かったですか?」
恭しく膝を折り頭を下げるその魔族の問いに、
ポップは首を横に振り、小さく笑う。
それは彼がもはや地上の味方ではない証。
「いいや、予定通りだ。」
「ではこちらを。」
頭垂れたまま差し出されるそれは黒い法衣。
その法衣を無言で羽織れば、ポップはひたりと倒れ伏す仲間達をみつめる。
現実には既に仲間ではないのだけれども。
そうして口を開き言葉を紡ぐ彼には、以前には感じさせないだけの威圧感があった。
「俺は地上の支配に興味はない。
望むのは天の破壊のみ。
死の大地を治めるは天への足掛かりに過ぎない。」
魔界から直接天界へ攻め込むことは出来ないから。
死の大地を掌中治めただけ。
ゆえに、其方から攻撃されぬ限り、手出しはしない。
そう高らかに宣言すればポップは徐にその首にかかるソレを引き千切る。
仲間との絆と言われたソレを。
アバンの印を。
「もういらない。」
静かに笑みを浮かべたまま、後悔の念すら見せぬまま。
ソレを投げ落とせば、ポップは踵を返す。
「まて!!」
カツンと歩みだした動きを止め、静止の声にゆるりと視線を向ければ、
今まさにグランドクロスを放とうと構えるヒュンケルに口角を持ち上げる。
「やめとけよなぁ。バーンとの戦いでボロボロになった体で、んなもん撃ったら死ぬぜぇ?」
「俺一人の体でお前が正気に戻るなら安いものだ。」
「・・・・・はっ・・・・・・バカじゃねっ?」
「・・・なんだと?」
「何度でも言ってやる。マジでばっかじゃねぇの?
俺が正気じゃないとでも?
俺が操られてるとでも?
ぶざけんな。
大魔道士と言われた俺が、たかだか魔族なんぞに洗脳されるか。」
「では何故そのお前が魔族と共に天に攻め込む?!
理由がないではないか!」
操られているのならばともかく、
ただの人間であるポップが何故天界と戦う理由があるというのか。
何故だと再三問うその様子にポップは小さく溜息を零す。
そうして、部下の来訪により崩れた壁から天を見上げれば、
ポツリと呟いた。
「天に。
神に絶望したから。」
ただそれだけ。
どれだけ神に願ったとしても、
決して叶わない願いもある。
それが神の都合でなければ恨む事もなかったかもしれない。
けれど。
神の温情も、慈悲も。
『人間』にのみ与えられるのだと。
『人間』ではない彼には決して与えられないのだと。
そう、自分は知ってしまった。
ただ一人の親友を。
地上が、人間が好きだと。
そう笑った彼を。
自らの身を守らせる為だけに天に縫いとめる事のなんと傲慢な事か。
忌々しげに天を一瞥し、ポップはかつての仲間に向かい嘲るように笑みを形作る。
彼らには決して言うまいと誓った。
未だ神を信じる彼らは、この持て余すほどの怒りを知る必要はないのだから。
知れば、彼らもまた天を憎むから。
だから。
「もうお前達が知ってるポップは何処にも居ない。
俺は、新たな魔王。」
だから。
バサリと法衣を翻しポップは息を呑み自分を見詰める彼らから視線を逸らし、
そうして一度だけ振り返り。
薄く微笑んだ。
「さようなら。」
ダイを取り戻したいと。
そう願う俺もまた傲慢なのだから。
神に逆らうのは俺だけでいい。
END
表ではご無沙汰の更新になりました。
偽装捏造オンパレードはいつもの事ですが、
これはダイポプと分類しても良いものか真剣に悩んでいる姫宮です。
うちのポップは殆どの作品がそうですが、
ダイに関しては限度がありません。
愛情でも友情でも。
見境がないと言うか、妄信的と言うか・・・・好きすぎるだろって言うくらい好きなので、
今回は何も考えずに突っ走ってもらいました。
お前の為だったら神様にだって喧嘩売るぜ〜!みたいな?
単に悪役のポップが無性に書きたくなっただけだったりするんですけどね(笑)
と言うか、
以前も似たようなことを書いた気がしますが、
何処までも神様が悪役って言うかラスボス扱いになるのはなんでなんでしょう?
そんなに神様が嫌いか、私は・・・・orz
いや、嫌いじゃないんです、嫌いじゃ!
単に捻くれてるから、直球に受け取れないだけなんです!(フォローにもならない;)
本当にそろそろ天罰が落ちそうだなぁとか思いつつ、
この辺で。
拍手ありがとうございました(礼)
戻る