例え生きる場所が違っていても。
共に歩んだ道は後ろに続いているから。
ただ、真っ直ぐに。
先を見据えて進もう。
女王の憂鬱 act.4
それは長い沈黙だった。
互いを見据え動かぬままどれほどの時間が過ぎたのか。
窓の下側に見えた月だけがゆるりと位置を変え。
二人を見下ろす様に柔らかい光で照らしていた。
そうして、その長い時間に終止符を打つ様に口を開いたのはレオナだった。
「・・・・・・そうなのかもしれないわね・・・・・」
そうはっきりと己の過ちを認めるレオナに、先程までの脆さはない。
今も胸に突き刺さる冷たい言葉はジクジクと痛みを訴えるけれど。
やっと、気付く事が出来た。
自分がどれだけ愚かだったかを。
「ポップ君なら大丈夫だって思ってたわ。
彼は強いから。
いいえ、いつだって彼は大丈夫と笑ってたから。」
だから気付かなかった。
レオナはそう自嘲する。
いつだって。
どんなに困難な状況でも。
彼は笑っていた。
大丈夫だ。
何とかなる。
そう微笑んでくれる彼の言葉を、そのままにしか受け取れなかった。
そうして、その間違いを気付かせてくれたのが
死闘を演じたかつての敵であるとは。
皮肉なものねと彼女は内心で苦々しく笑う。
最終的にダイを奪った眼の前の死神を敵だとしか判断出来なかった。
時は確実に流れていると言うのに。
過去に敵であったのは何も眼の前の死神だけではない。
かつて敵であった仲間も居るはずなのに。
死神の敵ではないと言う言葉を信じられなかった。
「・・・・・年を取るってイヤね。」
ふっと肩の力を抜き、レオナは苦笑する。
軽口を言う様にそう呟く姿に死神もまた気配を和ませた。
へぇ?と揶揄する様に口元に笑みすら形作り先を促す。
「いつの間にか頭が固くなっちゃうんだもの、ね。」
敵を敵としか見れず。
過去を拭わず。
未来を見れなかった。
「年を取るってもっと素敵な事だと思ってたわ。」
早く大人になりたいと、そう思っていたのにね。
そう溜息混じりに言葉を紡ぐレオナに死神は肩を竦める。
やれやれと呟く姿は相変わらず皮肉混じりだけれど、
先程までの冷たさはない。
むしろ、ようやく見せたレオナの年相応の反応を愉しんでいるかの様にも見えた。
「それは責任と言うんじゃないのカナ?」
己に与えられた女王と言う地位。
それは人の上に座し、
その地に在る者全てを護るべき存在。
危険があってはならない。
例え僅かでも護るべき民を揺るがしてはならない。
「ボクが聡明と言ったのはそう言う意味ダヨ、女王様。
キミは人の上に立つ意味と責任を理解している。」
そう紡がれた言葉にレオナははっと眼を見開き、
そしてあぁと嘆息した。
人の悪い笑みを浮かべる死神の言葉を理解して。
「そう・・・そうね。」
だからこそ。
己は彼の無事を願うだけだったのだ。
無事を願い、信じていると。
そう心を誤魔化す事しか出来なかった。
彼を探す事が再び火種になる日があってはならないから。
そしてそれを認めなかった事こそが己の弱さだったのだ。
「貴方にそれを教えられたってのはシャクだけど。
感謝した方がイイのかしら?」
悪戯交じりにそう呟けば、死神は肩を竦めてみせる。
イイヤと口元に笑みを模るその姿は、
かつて敵であった頃の姿からは程遠く、
改めてレオナは痛感する。
時間の流れは違うけれど、それでも変わるものもあるのだと。
そして、彼女には分かっていた。
それは予測でしかないのだけれど。
それでも限りなく真実に近い憶測。
きっとこの死神も。
彼に救われたのだ。
「・・・・・・ポップ君は元気?」
そうぽつりと呟けば。
死神は僅かに目を見開いて。
そうして人の悪い笑みを浮かべる。
「えぇ、とても。」
元気じゃない筈ないデスヨ?
そう呟く言葉にレオナはそっと安堵の溜息を洩らし、
そして酷く愉快そうに笑った。
彼の声が失われたのはきっと本当の事。
けれど。
ダイを救った彼がそのままな筈はないのだ。
「彼に伝えてくれる?
ありがとうって。」
今まで支えてくれて。
ダイを助けてくれて。
ありがとう。
「会いたいと思わないのカイ?」
ボクなら逢わせてあげられるヨ?
紡がれた魅力的な言葉にレオナは小さく笑う。
「死神と取引する気はないの。」
「へぇ?」
「それにね、もう良いのよ。
彼が会いたくないのなら、今は会うべきじゃないんだわ。
それを押しても探して会いたかったのは私の我侭で
ただの贖罪だったのだから。」
それにと言葉を続けレオナはくすりと笑う。
その表情は実に晴れやかで、彼女らしいもの。
悪戯に笑い小さくウィンクを一つすれば死神もまた小さく笑った。
「必要になったら自分から出てきてくれるわよ。」
「・・・・・・・フフフ、確かにそうかもネ。」
「人が良いからね。」
「おせっかいと言うんダヨ。」
「言えてるわ。」
柔らかい月の光に視線を移し。
レオナは思う。
彼が、この先どんな道を進むかわからなくとも。
己が、この先どんな道を進もうとも。
それでも。
生きる場所が違っていても。
共に歩んだ道は後ろに続いているのだから。
ただ、真っ直ぐに。
先を見据えて進もう。
いつかの未来に笑いあえる様に。
to be continued
あけましておめでとうございます!(え、今更?)
昨年中に完結させる予定だったこのシリーズ。
年跨いじゃいました;;;
あぁぁ;申し訳ないです;
つか、12月1月と殆どPC触れませんでした・゚・(ノД`;)・゚・
折角拍手を下さったのにも拘らず
お返事できなくて申し訳ありませんでした。
今年もすでにたいぶ経過してますが、
どうぞよろしくお願いいたします。
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