風にのり荘厳な教会の鐘が微かに聞こえる。
優しく、
全てを祝福するかの様に。
あぁ、なんて今日は素晴らしい日。
そして大魔道士は笑う
自らの国を治める歳若く、けれど聡明な女王の婚礼の日。
勇者の凱旋の時と同じかそれ以上に盛り上がる街の中、
彼は一人丘を目指す。
別に約束をしていた訳ではない。
けれど、なんとなくわかっていたから。
その男が、そこで自分を待っている事を。
丘へと続く道を登りながら、背後から聞こえる鐘の音に小さく微笑んで。
ポップは小さく呟く。
あれだけ逢わないでおこうと誓ったのに。
その決意をあっさり覆させるなんて。
本当に、お節介だと。
自惚れる気はないけれど、
大魔道士の名前は未だ有名で。
それは人の記憶に残っているから。
意識的にずっと避けていた。
地上へと降りる事を。
レオナがダイと漸く結ばれる。
仲間達が幸せになる。
その事実だけで自分は満足だと思っていたから。
なのに。
『行かなくてイイノ?』
そう聞いてきたのは、ダイとレオナの婚礼が決まって直ぐの事。
何処へ?と問い返せば、アイツは解ってるデショ?と確信めいた笑いを浮べた。
あの二人が幸せになる記念の日なのだ。
祝ってやりたいとは思う。
けれど自分の名も顔も知っている、仲間や知人が多く集まるあの場へと、
出席する気は初めからなかった。
何より、今の事を上手く黙っている自信も無かったから。
姿を見れないのは少し残念だけれど逢わないつもりだったのに。
本から眼を離さず、行くわけないと素っ気無く答えれば。
返ってきたのは、僅かに呆れた気配と溜息だけで、
それ以上は何も言わないでいたから。
もうその話は終わったと思っていた。
なのにまさか。
人の代わりに勝手に地上に降りているなんて。
「・・・・あれを見た時は、流石に眩暈がしたな・・・・」
あれほど煩いあの男の気配を、天界で感じなくなり、
可笑しいとヴェルザーに聞いてみれば地上に降りたと言う。
まさかそんな筈はと嫌な予感に胸騒ぎ覚えれば、
慌てて地上に降り、そして眼にしたのだ。
レオナと話すその姿を。
止めに入る事も叶わず、苛立たしい感情を持余して、
ただ成り行きを見守れば。
一瞬だけあの男は自分へと視線向け、してやったりと意地の悪い笑みを浮べ口を動かして見せた。
『止める勇気も、逢う勇気もなくしたクセに、邪魔はさせないヨ?』
と。
本当にお節介な上に、腹立たしい。
頼んでもいないのに、勝手に行動したくせに。
それが事実で動けなかったなんて。
人でなくなった事も。
永遠に老いるがない事も。
何とも思わない。
あの男の手を取った事も。
共に生きると決めた事も。
後悔はない。
けれど。
大切な仲間達にそれを告げる事。
決してないとわかっていても、
拒絶される事。
それを自分は怖がっていたのかもしれないと。
そう気付かされた事が、
あの男に言われるまで気付かなかった自分が。
腹立たしかった。
あの男が居なければ、
このままきっと、誰にも逢わないで。
自分が選んだのだからと。
仕方がないと言い聞かせて。
いつかきっと後悔したから。
坂を登りきり、祝福で溢れる町並み見渡せる丘で。
いつかの様に木に凭れるその姿に苦笑して。
ポップは静かに言葉を紡いだ。
「お節介。」
「・・・・・第一声がソレはどうかと思うヨ?」
全くもって酷いヨネと大袈裟に肩を竦めて見せる姿に、
ポップは皮肉げに口角を持ち上げて、何を今更と笑って見せる。
「ほーんと頼んでもいないのによ?勝手に姫さんに会いに行きやがって。」
「ボクはボクのしたい様にする主義ダカラネ。」
「しかも泣かせるし?」
「半分以上キミの所為デショ。」
ボクは事実を言っただけ。
そもそもは何時までも会うのを躊躇ったキミの所為。
悪びれる事もなくサラリとキルがそう言葉を紡げば、
ポップは僅かに言葉を詰まらせ、小さく溜息を吐いた。
何時までもニヤニヤと意地の悪い笑みを浮べるキルに、
少しだけ不貞腐れた様に煩いと呟いて。
ポップは街へと視線を巡らす。
戦火の跡も消え、幸せな未来を想像させるその町並みを。
ネェ?と掛かるその声に、視線を戻して。
今度はなんだと短く問えば、
ゆっくりとキルは言葉を紡ぐ。
「行かなくてイイノ?」
変わらずに揶揄する様な笑みを浮べたまま問うキルに、
深々と溜息を零して。
ポップは静かに笑った。
今はまだ、仲間以外も沢山集まっているから。
逢うわけにはいかないけれど。
騒ぎが収まったら、逢いに行こう。
その時は、
きっとまた別の意味で騒ぎになるだろう事を確信しながら。
姫さんは良いとしても、
ダイとかラーハルト辺りは特に煩いかも知れない。
ヒュンケルやおっさんは声も出ないだろうな。
そんでマァムと先生はきっと困った様に笑うだろう。
かつての敵だったコイツを連れて行くのだから。
今から楽しみだと、一人満足そうに頷けば、
訝しげに自分を見る『元』死神に近付き、
そっと口付けて。
そうして、
静かに、
穏やかに、
そして少しだけ悪戯めいて。
「今度、お前と一緒に逢いに行くさ。」
『元』大魔道士は笑った。
END
こ…今回は更新早かったぞ、自分っ!(握り拳)
拍手ありがとうございます!
そして、ここまで読んで下さりありがとうございました(深礼)
死神のキモチから始まり、今回のそして大魔道士は笑うまでの
計20本にも渡る死神シリーズにお付き合い頂き、
本当にありがとうございました。
今回で拍手での死神シリーズは終了。
次回からはまたssは不特定のお相手に更新に戻し、
死神シリーズは自体は別枠で更新の形に変えて行こうと思っております。
そろそろお師匠も恋しくなって来ましたし(笑)
本当に沢山の方から死神シリーズが好きですと言って頂けて、
姫宮は喜びと感謝のキモチでいっぱいです。
死神シリーズも何処まで続けられるか(ネタが続くか)
わかりませんが、まだまだ続けていきたいと思っておりますのでどうぞ宜しくお願いいたします。
拍手ありがとうございました!!!
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