「うっわ。眩しい。」

長い間焦がれた太陽の光にダイは目を細める。

「そっか。太陽ってこんなに眩しかったっけ。」

魔界とは全然違う明るさと木々の瑞々しさに懐かしさ感じ、
そして町並みこそ変わっているが平和そうな地上に安堵する。
と、同時にある種の満足感が湧きあがる。

「・・・良かった。」

本当に良かった。
地上が平和で良かった。
大切な仲間がいた地上を守る。
そう思い続け戦い続けた事は無駄では無かったのだ。


そうしてダイは微笑むと暫くその平和そうな世界を眺め続けた。











ここはある国の王立図書館。
残念ながらすでに知っている名の国は存在しなかったけれど、
こうして過去の書物は存在していた。
そんな中で見つけたのがこの一冊だった。
『忘れてはならない戦いと偉人達』
なんだか変な気分だと思いながらもパラパラと本を捲りダイは嬉しそうにその項目を見つけ出した。
「・・・あった。」





アバン・デ・ジニュアール三世
魔王ハドラーを倒し世界を救った最初の勇者。
大魔王バーンを倒した勇者ダイの師でもある彼は、
その後故郷カールに戻り女王フローラと結婚。
一男二女を授かり平和に暮らす。
享年56歳。


「へぇ。やっぱりフローラ様と結婚したんだ。」

そんな感じだったもんね、と嬉しそうに呟く。


パプニカ国女王レオナ
勇者と共に戦ったアバンの使徒の一人。
大戦後女王に即位。
歴代の王の中でも賢者と誉れ高い女王。 即位と同時に当時のロモス国王の甥と婚姻。
子宝には恵まれなかったが、沢山の養子に囲まれる。
夫との仲睦まじさは有名であった。
享年75歳。



「・・・長生きしたんだね、レオナ。」

良かったと思う。初めての人間の友人。
何時だって真直ぐに先を見ていた彼女が生涯の伴侶を得られて本当に良かったと。

「次は・・・あ、ヒュンケルだ。へぇ〜マァムと結婚したんだ。」

ダイは次々とページを捲っていく。
瞳を輝かせるその顔はかつて仲間に見せていた屈託の無い笑顔だった。
けれど。
そのページに辿り着いた時。
それまでの表情とは一変しダイの表情が曇る。

「・・・・うそだろ・・・?」

誰に言うとでもなく呟いたその声は戦慄いていた。
それは衝撃的で、
そして絶望的な文字。

「誰よりも・・・お前に幸せになって欲しかったのに・・・」

ダンっ!と拳が叩きつられた机は儚い紙のようにボロボロと崩れ去る。
周囲のぎょっとした視線に構いもせず、ダイは唇を噛み締める。

開かれたページにはこうあった。

大魔道師ポップ
あらゆる魔法を掌中に治める稀代の天才魔法使い。
詳細は一切不明。
享年18歳。
惜しまれつつも若くして逝ったとされる彼は
遺体が何処に埋葬されたかすら不明である。

と。


「どうしてだよ・・・ポップ・・・・っ!!」



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